掲載:2016年11月 / 文責:レスピラトリ・ケア部
第26回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術講演会(会長 聖路加国際病院 呼吸器センター 特別顧問 蝶名林直彦先生)にて、座長に地方独立行政法人長野県立病院機構 理事長 久保惠嗣先生を、演者にKKR札幌医療センター 感染制御部部長代行 呼吸器内科医長 福家聡先生をお招きし、コーヒーブレイクセミナー「一般病棟でこそ使ってみよう!経皮的CO2モニタリング装置(TOSCA)」を共催させていただきました。
2016年10月10日(月・祝) 15:40~16:20
パシフィコ横浜 会議センター3F F会場
座長: |
地方独立行政法人 長野県立病院機構 理事長 久保惠嗣先生 |
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演者: |
KKR札幌医療センター 感染制御部部長代行 呼吸器内科医長 福家聡先生 |
今回福家先生からは、TOSCAの測定原理、精度、経皮的二酸化炭素分圧(TcpCO2)の変化をどう理解するか、臨床状況把握への有用性について、それぞれの項目について具体例や注意点などを発表されました。
座長:久保先生
はじめにTOSCAの測定精度とPaCO2変化への追従性ついてご自身で行われた研究データをベースに説明されました。これは臨床使用上、TOSCAの測定数値が有用なのかを評価する重要な研究です。全測定データの解析を行ったところ血液ガスと良好な相関性があるが、多少ばらつきが見られた。しかし個人内でのPaCO2とTcpCO2比較では極めて良好な相関が認められ(r=0.96~0.99 )、そこで得られた補正式で補正した値はPaCO2の変化を良好に反映したことを発表されました。またPaCO2の急性変化に対する追従性に関しても良好で、TcpCO2とPaCO2変化の時間差は95秒であり、臨床上での有用性が示唆されました。
演者:福家先生
臨床使用例においては気管支喘息や肺結核後遺症の急性期NPPV導入例を紹介されました。NPPV導入に伴いTOSCAにてTcpCO2測定を開始、導入後TcpCO2を連続モニタリングすることにより換気改善が確認された症例を紹介されました。慢性期NPPVの機器調整の例として機械調整目的で入院されたCOPD患者さんへのTOSCAの使用例が紹介されました。機器の吸気圧およびトリガー感度の変更が患者さんに適切かどうかのアセスメントにTOSCAを使用した症例を紹介され急性期だけでなく慢性期NPPV患者へのTOSCA導入の重要性を説明されました。
NPPV療法の実態調査のデータを紹介され、 NPPV導入基準や吸気圧設定の基準の目安となるパラメータの大きな要因の1つがPaCO2であるならば導入前後でのCO2モニタリングは有用であると呼吸管理法としてご提案をされました。また在宅酸素療法中の患者さんの増悪時ネーザルハイフロー導入され、その際にも終日TcpCO2測定を行いPaCO2が上昇しないかモニタリングした症例も紹介されました。
臨床使用経験が豊富な福家先生ならではのTOSCA使用中のトラブルシューティング法も紹介されました。測定データにアーチファクトが入った際の対応方法、血ガスとTcpCO2の数値が解離した際の考えられる原因と対策についても先生ご自身の経験の中から分かりやすくご説明されました。
最後に従来血液ガス測定は患者さんにとって侵襲度が高くスポット測定しか出来ないものだが、TOSCAは容易に非侵襲でTcpCO2が測定できるため一般病棟での有用性が極めて高いので、今後TOSCAが幅広く病棟で使われることを願っているとお話され、セミナーは終了となりました。
2016年春の診療報酬改定により経皮二酸化炭素分圧測定は保険適応となり、現在数多くの病院様より問い合わせ等を頂くようになりました。この礎となる基礎研究や症例報告を10数年前より精力的に行ってこられた福家先生ならではの発表内容だったと感じております。
素晴らしい講演をいただいた演者の福家先生、スムーズな司会進行により本セミナーを成功に導いてくださった久保先生に深く感謝を申し上げます。
文責: レスピラトリ・ケア部
2016年11月
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