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第37回日本呼吸療法医学会BCVシンポジウムを終えて

 

第37回日本呼吸療法医学会BCVシンポジウムを終えて

 

 今年の第37回呼吸療法医学会学術集会BCVシンポジウムは当学術集会において8年連続8回目の開催となりました。

 そのため、今回は二部制とし、COPDと小児急性呼吸障害の2疾患に絞り込み、両分野におけるオピニオンリーダー的立場の先生方からBCV治療の独自のプロトコールと有効性についてご発表いただきました。

 第一部は、COPD症例に対する有効性について呼吸器内科とリハビリテーション科各2名の先生方にご発表いただいた後に、演者の先生方にパネリストとしてご参加いただき、コーディネーターの座長先生とパネルディスカッションを行い、会場の参加者を含めてご討論いただきました。

 第二部は、近年、おかだこどもの森クリニック院長岡田邦之先生(埼玉医科大学小児科非常勤講師)や埼玉医科大学小児科植田穣先生が中心となって小児急性呼吸障害に対するBCV治療法が数多く報告されていますが、特に外来診療において頻呼吸や喘鳴、チアノーゼなどの呼吸窮迫症状を呈している患児にBCV治療(1時間程度の持続陰圧モードや短時間のクリアランスモード)を行うことによって症状が改善し入院加療を回避できる症例を多く経験されておられますので、そのご経験を含めて岡田邦之先生にご講演いただきました。

 

プログラムは以下の通りです。

開会のご挨拶:15:10~15:15
東京女子医科大学 麻酔科学教室 准教授 小谷  透 先生

第一部:COPD患者に対するBCV治療の有効性:15:15~16:40
座長:おかだこどもの森クリニック 院長 岡田邦之 先生

  演題名: COPDにBCVは「効く」のか?
  演者: 国立病院機構松江医療センター 呼吸器内科・教育研修部 医長/教育研修部部長 門脇 徹 先生
  演題名: COPD急性増悪期におけるBiphasic Cuirass Ventilationによる呼吸理学療法的効果
  演者: 刈谷豊田総合病院 呼吸器・アレルギー内科 部長 加藤聡之 先生
  演題名: 肺気腫、間質性肺炎の患者に対するRTXを使用した呼吸筋補助が呼吸能力、運動能力について与える影響~症例報告第1報~
  演者: 京都府立医科大学大学院 リハビリテーション医学 学内講師   伊藤倫之 先生
  演題名: COPD患者に対するRTXの短期的&長期的効果の検討
  演者: 浜松医科大学医学部附属病院 リハビリテーション科 助教 山内克哉 先生

パネルディスカッション:16:20~16:40
 コーディネーター:おかだこどもの森クリニック 院長 岡田邦之 先生

第二部:小児科領域におけるBCV治療の有効性:16:50~17:40
座長:浜松医科大学医学部附属病院 リハビリテーション科 助教 山内克哉 先生

  演題名: 小児呼吸障害に対するBCV治療の有効性
  演者: おかだこどもの森クリニック 院長 岡田邦之 先生

 

 今年の日本呼吸療法医学会学術集会は祇園祭と重なり、ホテルなどの宿泊先は何処も満室で学会に参加された皆様は宿泊先確保に大変苦労されたことと存じます。

 また、学会初日(BCVシンポジウム開催当日)は台風11号の影響で午前11時ごろから未明まで土砂降りの雨と成り、鴨川は濁流が道路に溢れんばかりの様相でしたが、幸い風が弱かったため祇園祭り前半のハイライト「山鉾巡行」は予定通り実施されました。

 

 大雨の中、BCVシンポジウムも予定通り開催され、2時間30分の長時間にも拘わらず多数の方々にご参加いただき、ご聴講いただきました。

 第一部の「COPD患者に対するBCV治療の有効性」のセッションでは、初めに呼吸器内科医でいらっしゃる門脇先生がご講演され、症例を提示しながら,COPDにおけるBCVの有効性や作用点,将来性についてNPPVと対比しながら概説いただき、NPPVとのコンビネーションの可能性についてもご考察いただきました。

 また、呼吸器・アレルギー内科医でいらっしゃる加藤先生には、BCVの作用特性としてCOPDの急性増悪期の換気補助効果に加えて、特にコンディショニングの面からの呼吸理学療法にも応用させられる可能性が高いこと。具体的に期待できる効果は、排痰の促進、呼吸介助、リラクゼーション効果、胸郭可動域への介入、エアトラッピングの改善などがあり、殊にBCVの胸腔に対して陰圧のみならず陽圧を加えられるということが、これらの効果をより効率的に得ることに繋がっていると推測され、優れた点であるとのご発表をいただきました。

 リハビリテーション科医の伊藤先生には、以前、他の学会で重症筋無力症の女性に対してRTXを用いて運動療法を行うことで、最大酸素摂取量やトレーニング時の運動負荷強度が増加したことを報告されましたが、その機序として、重症筋無力症では、呼吸筋も疲労しているため、運動時の換気量が保持できず、持久的トレーニングが困難なため、さらに持久力が低下していくという悪循環にあったものをRTXが呼吸筋を補助することにより高負荷の運動が行えるようになり、持久能力が向上したのではないか。そこで、肺気腫や間質性肺炎の患者は酸素化不良のため、努力性呼吸となり、呼吸筋疲労になっていることもしばしば見られるため、RTXを用いることにより重症筋無力症の患者と同様な効果があるのではないか。そこで今回、在宅酸素療法(HOT)を行っている肺気腫の被験者Aと間質性肺炎の被験者Bの男性2名においてRTXの補助により呼吸筋が休めているかを肺活量(VC)で評価し、比較検討した結果をご報告いただきました。

 また、伊藤先生と同じリハビリテーション科医の山内先生には、COPD患者に対して、RTXをコントロールモードで使用して、その効果を短期的な面と長期的効果の面からご検討いただきました。呼吸機能として、肺機能(FEV1.0%, FVC, 胸郭周囲径)、歩行能力は6分間歩行、健康関連QOLは、呼吸器疾患に特異的に用いるQOL評価法である SGRQ(St. George`s Respiratory Questionnaire)を用いて、RTXの効果を検証した結果をご報告いただきました。

 4名の演者の先生方には発表終了後ステージに登壇いただき、総合司会の小谷先生とコーディネーターの岡田先生、更には客席にご参加いただいた聴講者の皆様にも加わっていただき、パネルディスカッションが行われました。

 冒頭、会場の聴講者の皆様に現在RTXを使用されているか否かを挙手で確認しましたところ、ほぼ参加者全員が使用されておられました。

 演者4名の先生方は、COPDに対するBCV治療の有効性の評価について、それぞれ異なる見地からご発表いただきましたが、パネルディスカッションでのご討議を総括すると、BCV治療は単に人工呼吸としての性能を評価するのではなく、今後はCOPD患者のQOLやADL(Activity of Daily Living)の改善に資する可能性を追求した臨床研究を進めることで一致しました。

 

 第二部は前述しました通り、小児急性呼吸障害に対して日本で一番多くのBCV治療を施され、膨大なデータとご経験を基に沢山の研究報告をされている“おかだこどもの森クリニック院長”岡田邦之先生にご講演いただきました。

 岡田先生は、発売開始当時からRTXをご採用いただき、埼玉医科大学病院PICUにおいて入院患児に対する豊富な治療経験をお持ちで、以下の内容でご講演されました。

 

 RTX®の効果発現は数十分程度から認められ約半日間持続することが確認されている。そこで、当院開業と同時に外来でのBCVを開始した。対象は、気管支喘息や気管支炎、肺炎、細気管支炎など下気道病変による呼吸障害を呈する症例で、年齢は新生児から高齢者まで全年齢層にわたっている。臨床的に呼吸窮迫が高度な症例には持続陰圧モード、軽微な場合はクリアランスモードを施行し、明らかに入院不可避様の呼吸器症状が顕著な場合を除き、一般的には入院適応と考えられる症例であっても施行時間を長くしたり、同日に複数回施行や連日使用により多くの症例で入院を回避することが可能であった。

 このようにRTX®の治療効果は、臨床的には認められつつあると考えるが、その科学的根拠は乏しく臨床医の主観に留まっている。そこで、患者アンケートによる治療効果を紹介するとともに、臨床症状の改善を客観的に評価すべく検査データの一部を紹介し、今後のRTX®治療における問題点と可能性について述べる。

 

 ご講演終盤では、小児急性呼吸障害におけるBCV治療の標準化に向けた多施設共同研究(RCT:現在7施設が参加)がスタートしたこと。更に多くのご協力いただける施設を募集中であることが報告されました。

 以上で2時間30分のBCVシンポジウムは無事に終了致しましたが、開始から終了まで多くの方々にご聴講いただきました。心より感謝申し上げます。

 

 末筆ながら、当BCVシンポジウムの開催に当たり、ご快諾いただきました学会長の京都府立医科大学附属病院集中治療部部長 橋本 悟 先生、並びに8年間に亘り当学会とBCVシンポジウムの橋渡しにご尽力いただきました東京女子医科大学麻酔学教室准教授 小谷 透 先生、ご講演いただきました先生方に衷心より御礼申し上げます。

 

 当シンポジウムの模様は、例年通り学会事務局並びに演者の先生方のご許可をいただきビデオ撮影を行っております。

 後日、医療従事者の方々でご聴講いただけなかった皆様にDVDにコピーしたものを無償で配布させていただきますので、ご期待ください。

注)文中では、演者の先生方の当学会BCVシンポジウム発表用抄録の一部を抜粋し使用させていただきました。掲載につきましては、演者の先生方にご了承いただいております。

 

 

文責: レスピラトリ・ケア部 野澤健三

2015年8月

 

 

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