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デブリーフィング テクニック

元英国看護大学教官であり、英国初の看護師専用シミュレーション・センターの初代インストラクターを務められたアマンダ・ウイルフォード氏を本年4月に招聘、弊社本社で講習会を開催しました。

座学のみならず高機能患者シミュレータを使用したハンズ・オンを挟み、シミュレーション教育の実践を2日間にわたってレクチャー頂きました。今回はその中で教授された“デブリーフィング・テクニック”の一部を御紹介したいと思います。

 

デブリーフィングとは、シミュレーションを通じた学習内容の固定化とその臨床応用にとり極めて重要な作業と理解されています。

また、INASCL(International Nursing Association for Clinical Simulation and Learning)は、デブリーフィングの定義を「シミュレーション後にファシリテータにより導かれるもの。フィードバックを提供し、“振り返り”と“議論”を通じ参加者に自律的な思考と将来の行動変容を促すもの」としています。

実際のシミュレーションの中では、受講者はその立場が許容する部分しか見えません。シミュレーション後のデブリーフィングを通じ、自己の行動を客観視し、その中から“気づき”が導かれることになります。

より効果的・効率的なシミュレーション教育を望むのであればデブリーフィングは不可欠な手段として位置付けられます。


 

デブリーフィングにおけるファシリテータの役目は、デブリーフィングを促進させる事です。

参加者が自律的及び洞察的思考を以てデブリーフィングから最大の効果を引き出せるように支援する事がファシリテータの役割。この役割にあたってNeill & Wotton(2011)は「ファシリテータは次にあげる6つの点を考慮しなければならない」としています。

 

 1. 計画性

シミュレーション・シナリオだけではなくデブリーフィングにおいても計画性が必要。

デブリーフィング内容をいかに構成するかが、受講者の考察の深さと関係することを理解する。

 2. 行動態様

いかに受講者に接するかが学習効果に影響する事を理解しなければならない。

この為には受講者に協力的な姿勢を惜しまず、ファシリテータは言語的・非言語的の両面で受講者を支援する必要がある。

 3. 環境

安全で信頼できる環境を整える必要性を理解し、また、デブリーフィングに参加する受講者の個人的背景、文化、個性、スキル等の違いを考慮に入れて守秘性が担保されねばならない(米国では、守秘義務に関する書面締結もあり得ると)。

 4. 質問法

受講者の過分な不安を取り除き、デブリーフィングに対しての積極的な参加を促すために「質問」を多用する事が必要である。また、デブリィーフィング時の「質問」は結果・結論を性急に求めるものであってはならない。

 5. 時期

受講者がシミュレーションにより得た経験を効果的に自己の基礎知識に組み込ませる為にはシミュレーション・シナリオ実施の直後にデブリーフィングの実施が推奨される。

 6. 時間

学習者がシミュレーション・シナリオにおけるパフォーマンスを充分に評価・議論するためにはシミュレーション・シナリオ実施時間に対し2-3倍の時間をデブリーフィング・セッションとして設ける事が理想的である。

 

ファシリテータの役割と心得はお分かりになっていただけたかと思います。それでは、ファシリテータは具体的にどのようにデブリーフィングを進めたらよいのでしょうか?

 

★ シミュレーションの事前準備 

・学習目的の明確化

・シミュレーション時の受講者の安全性配慮
・守秘義務に対する配慮確認
・受講者に対する全体的な流れの説明
・シミュレーション時のファシリテータ及び受講者の役割説明
・受講者及び受講者の視点・自律性を重視する旨の説明
・デブリーフィングのプロセス説明

 

★ デブリーフィング時

1. 感情 (受講者の緊張の解放と次のプロセスに向けた誘導)

シミュレーション・シナリオの実施を通じ、受講者のテンションは高い状態にあります。 このままデブリーフィングに入る事は望ましくありません。まず、受講者の感情的なエネルギーを発散させ、受講者をリラックスさせる事が必要です。

2. 意見交換と統合化 (受講者の発言促進とシミュレーション・シナリオから受講者 が得た学習・経験の統合化)

ここからがデブリーフィングの本番となります。ファシリテータが留意しなければ
ならない事の第一番は「教え込もうとしない」事です。ファシリテータにとり大切なことは受講者の発言を促し、またそれを良く聞きデブリーフィングをコントロールすることにあります。一方的に教える事ではありません。受講者による活発な意見交換により受講者をデブリーフィングに集中させ、このプロセスの中から受講者の自発的な発見と学習を導かねばなりません。その為には「質問」を多用する事です。質問は結果・結論を拙速に求めるものであってはいけません。あくまでも受講者に「気づき」を与える為の質問が考慮され、準備されなければなりません。
ファシリテータの誘導による受講者の意見交換と知識統合化プロセスは、下記の手順となります。

((シミュレーションのイベントに対する話合い))

受講者によるシミュレーションのビデオを全員で見る

(適切な時に。映像は自己のパフォーマンスを客観的に説明することになる)。  

シミュレーション時に行ったケア、立ち振る舞い、その際の患者の反応を受講者に深く分析させ、何が良かったのか?どの点を改善したらよいのかを考えさせる。

学習目的に沿い自己評価、安全性、チームワーク、協調性、優先順位付けの面からファシリテータは受講者に質問を投げかけ受講者の自律的気づきを補助する。

受講者の発言、受講者間の討議より、ファシリテータは理論と実践の橋渡しを行い、 シミュレーションと言う非現実性から得た受講者の体験・気づきを臨床現場という現実性へつなげる補助をする。

 

★ サマリー作業 

・デブリーフィングが終わることのシグナルを送る。

・受講者が得たここまでの経験を包括的に振り返る手助けする。
・(ここでもまた質問法を使用して)受講者が学んだことを確認する。
・今回のシミュレーション、デブリーフィングから受講者が学んだ事、得たことをレビューする。
・受講者が学んだ事、得たことを現実世界に置き換える。
・受講者が前向きな姿勢・雰囲気の状態で終了する。
・評価表を受講者に記入させ回収する。

質問のテクニックは色々あると思います。受講者のレベルや、学習目的によっても質問法が異なります。

質問は受講者にストレスを与える為のものではなく、あくまでも気づきを求める為のものでなくてはなりません。

どのように質問するかは、事前に検討されねばなりません。

御参考案までにCarperの”Five way knowing” に沿ったJefferiesの質問事例を御紹介します。

 

Facilitator’s Tool for Guided Reflection Questions
Ways of Knowing Open-ended Questions to Encourage Reflection-on-action
Empirical
  • What knowledge informed or might have informed you?
  • Talk to me about the knowledge, skills, and experiences you have that helped you provide patient care during this simulated experience.
Aesthetic
  • What particular issues seem significant to pay attention too?
  • Talk to me about the problem your patient was experiencing.
  • What was your main goal during this simulation?
Personal
  • What factors influenced the way you felt, thought or responded?
  • Tell me what influenced your actions during the scenario.
  • Talk to me about how this experience made you feel.
  • Talk to me about how satisfied you are with the actions you initiated during this scenario.
Ethical
  • To what extent did you act for the best and in tune with your values?
  • Talk to me about how your personal values and beliefs influenced your actions during this experience.
Reflection
  • How might you respond more effectively given this situation again?
  • Talk to me about how you knew what to do during this situation.
  • What would you do differently if we went back into the patient’s room and repeated the experience?
  • Discuss how you will use what was learned in this experience in the future?

  (Jefferies, 2007, p. 81)

 

誌面の関係上、表層的なものに留まるかもしれませんが、如何でしょうか?

実際、受講者の学習効果を含めたシミュレーション教育の成果は、ファシリテータがいかにデブリーフィングをコントロール出来るかに関わっています。その為には、今回書ききれなかった細かなテクニックやファシリテータの配慮も必要となります。

 

弊社講習会では実際のハンズ・オンを通じて、そのあたりをウイルフォード氏に御指導頂きました。

講習会に御参加頂いた皆様からは御好評を頂きましたので、2014年も同様の講習会を計画しております。御興味のある方は、是非次回講習会への御参加を御検討下さい。

 

 

(2013年11月 救急・教育部)

 

 

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