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日本初!島根大学大学院『医療シミュレータ教育修士課程』を設置

 

近年、世界並びに日本で広がりを見せるシミューション教育に日本では初めてとなる“シミュレータ教育 修士課程”が設置されました。島根大学大学院医学系研究科では「医療シミュレータ教育指導者養成コース」が平成23年に新設され、シミュレータ教育のインストラクターの育成に取り組まれておられます。

経験がある方であれば想像していただけるかと思いますが、院内研修を担当することは研修の準備、進行に多大な労力が必要とされます。ですが受講生の反応はイマイチといったこともあります。

そんなご施設に優れたシミュレータ教育のインストラクターが配置されると、どのような変化が起こるでしょうか。熟練したシミュレータ教育のインストラクターの進行は、体験する実習者はもちろん、周囲で観察する人たちも巻き込み、会場を1つにし、研修をより実りのあるものへと変えてくれるかもしれません。

今回、日本で初めてとなる島根大学大学院 クリニカルスキルアップセンター長 狩野賢二先生に「医療シミュレータ教育指導者養成コース」についてお話をお伺いしました。

(アイ・エム・アイ(株) サービス企画)

 

島根大学大学院医学系研究科「医療シミュレータ教育指導者養成コース」概要

医療系大学及び医療機関に設置されたスキルアップセンターやスキルラボにおいて医療シミュレータ教育に従事することや、医療系職種の養成機関において臨床実習前のシミュレータ教育に従事者することのできる「医療シミュレータ教育指導者」を養成。詳細については、島根大学大学院HPよりご確認ください。

島根大学大学院HP: www.med.shimane-u.ac.jp/graduate/

出願資格: (1)一般入試  (2)社会人入試

試験科目: 外国語(英語),口頭試問,提出書類の審査を総合して判定

長期履修制度: 職業を有している人などで研究時間が十分に取れず標準の修業年限では修了することが困難な人が、修業年限を超えて長期にわたって計画的に教育課程の履修を行う制度があります。

「医療シミュレータ教育指導者養成コース」新設の背景

島根県の高齢化率は日本で一番高く(2009年内閣府発表)少子高齢化の先頭を走っており、深刻な医療不足地域です。看護師数が少なく病棟閉鎖されるところや医師が少なく診療所を閉鎖するところは沢山あります。このままでは医師一人あたりの負担を過大に強いることになり、地域医療全体が崩壊しかねません。
ですから、地域全員で医療の底支えをする必要があり、医療の底支えを促進するインストラクターの育成は重要な課題です。

また、日本でスキルラボのような研修施設を設置する医療機関・病院が増え、シミュレータ教育を行う機会も増えていますが上手く稼働させているでしょうか。おそらく少ないのではないでしょうか。これはインストラクターがいる、いないに関係しているのではないかと考えています。良いインストラクターが病院に一人いることで、シミュレータ教育がずいぶん違ったものになると考えています。
こうした理由で、島根大学大学院では「医療シミュレータ教育指導者養成コース」を平成23年新設し、医療シミュレータ教育のインストラクター養成を始めました。

今後、少子高齢化は全国で広まっていくことが予想され、他県からの入学も積極的に受け入れ、インストラクターの育成に取り組んでいきます。今年4月から各地域のインストラクターを繋ぎ、情報交換を行えるインストラクターネットワーク作りに取り組みを始めたところです。

 

医療の底支えを担うインストラクターの活動

私自身、インストラクターとして島根県全域230キロ、離島にも足を運び、ネットワークを広げる活動を行っています。隠岐の島にも頻繁に行きます。様々なシミュレータが私と一緒に出前研修に行っています。

近く「チーム医療を目指して」というテーマで、医師、看護師、放射線技師、臨床検査技師、管理栄養士など100名ほどが集合し、シミュレータ教育を行います。

今回のシナリオは、コミュニケーション不足の改善です。 同姓同名の患者を取り違えて、医師の指示とは違う患者さんを連れていってしまい、心電図をとるべきところを、レントゲンをとってきてしまう。コミュニケーション不足から起る問題について、専門職に応じた解決策を出し合い、話し合ってもらいます。

このシナリオは、バイタルサインを判読するようなものではなく、コミュニケーション不足から起きる問題を解決するシナリオです。

ハイエンドのシナリオを使用することもあれば、コミュニケーション不足を問題にするシナリオを用意することもあります。このような幅広い活動もインストラクターは行います。 継続した活動は新しい動きを生み2つの病院間でお互いのインストラクターが合同で新人看護師研修も行われるようにもなりました。地域、各病院に応じたシミュレータ教育が存在するので活動も多様です。 

 

大学院生となりますと、本校で行われる実際の研修に参加し、多くの知見を得る機会があります。島根県以外の地域からの入学者希望者にも、参考にしていただける事も多いと考えており、週に1度、受講されるのも良いですし、窓口は広く空けております。推薦入試もありますので詳細は本校のホームページをご覧ください。

 

 

医療シミュレータ教育において求められるインストラクターについて

シミュレータ教育は世界で広がりを見せ専門職として認知されています。

メカニック、システムエンジニアさんもいます。日本でシミュレータ教育を展開する上での障害はマンパワー、専門性のあるインストラクターの不足。やはり専任のインストラクターが一人いることがベストです。もしインストラクターがいれば研修医の初期研修、看護職の研修等行えますし、配置換えのあった際にもすぐに行えます。

シミュレータ教育のインストラクターに求められる要件は多く、研修準備、プログラム作成、医学への知識と理解、コーディネート能力、ファシリテータ能力、そして教育者としての側面が必要です。高機能患者シミュレータを使った研修は模擬患者ですから人体と同じようにはなりません。シミュレータ特有のノウハウを知っていなければ使えなくなります。加えて、医学知識や研修参加全員が100点の取れる難易度の設定ができる教育指導者の要素。シミュレータ教育の状況設定に合わせたアイデアを提供するファシリテータ、映画監督のような要素も必要でしょう。これらを行える能力を持っている人のことを専門職と呼ぶのではないでしょうか。インスラクターは、どのように高機能患者シミュレータを活かせるかを考えられる人であり、シミュレータ教育の専門家として基礎的な内容である採血、血圧の測り方、聴診はもちろんですが、SP(模擬患者)と高機能患者シミュレータを組み合わせたハイブリッド型研修も行えることも必要になってくるのではないでしょうか。

 

 

「医療シミュレータ教育指導者養成コース」教育内容

大学院生は、シミュレータを使って何ができるかを研究、実行、評価し纏めます。2年次ではインストラクターを育てることを学びます。シミュレータ教育を受講するために本校にやってくる医療従事者への研修に参加してもらい、研修のノウハウを修得します。ノウハウは経験の蓄積から得られることも多く、バイタルサインだけで判断する研修に陥らないような進行、初対面の研修受講生に応じた進行も考えなければなりません。注意なければならないことも多く、アイブレーキング1つとってもノウハウがありまります。

 

本コースでは、上記のような内容を研究し成果をもって修了の要件としています。現在、日本ではシミュレータ教育を体系化した学問はありませんから将来、本コースでの研究成果は貴重な成果となるのではないでしょうか。 本校での研修では様々な理由で受講される方もいらっしゃいます。 例えば、過去のケースでは何年かぶりに新人看護師さんが入った病院のベテラン看護師さんが新人への教育方法がわからずやってくるケースや、自信を喪失した新人看護師さんが受講された時には仕事への興味を抱かせるようなケースもありました。 本コースに入学された方には、看護師、救命救急士さんもおられますので、ぜひネットワークに加わっていただけることを楽しみにしております。

 

将来について

最近、日本でEPA看護師試験を受験されるアジア(フィリピン、インドネシア)の方々のニュースを知り、将来、本校で外国人インストラクターの育成も行っていければ良いなと考えております。私はOSCEを教えていた経験があり、患者さんの症状の訴えが地域毎に異なった表現になることがあります。外国人の看護師にとって、この辺りが難しいと感じるのはないでしょうか。アジアの架け橋となるインストラクター育成は行ってみたいですね。

 

(終わり)
2012年5月インタビュー

 

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