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インプレッション  小谷透先生インタビュー

(聞き手=IMI) RTXの第一印象は如何でしたでしょうか?

(小谷先生) 理論は悪くないというのは判るんですが、見てくれ....。
プラスチックなカバーと手作りのホースと。割とプリミティブなプログラムで動いているような。
「うんー、これで効果があるのかな?」という印象が一番強いですね。 臨床データを見させて頂いて「そこそこ効くんだろうな」というのが、もう一つですね。
僕としては、ずっと呼吸管理で肺損傷をやってきたので、「陽圧換気というのがいかに良くないか」「いかに自発呼吸が良いか」が身に染みて分かっていたので、RTXを、とにかく一回使ってみたい。それが特殊な環境でしか使えないのか、割とイージーに使えるのか、イージーに使える特別な疾患があるのか、難し い状態でも普通だったら効果がないような疾患でもRTXを使うことで通常換気を凌駕する、通常換気をものすごくサポートするような分野があるのか、という のが興味を持ったところですね。

 

(聞き手) RTXの前(昔の体外式人工呼吸器)のチェストレスピレータや鉄の肺といったものは、ご覧になられたことはありますか?
(小谷先生) さすがに知らないですね。鉄の肺モドキのようなものを一度大学の倉庫で見かけましたが。装着するのにすごく大変なものというのは、一般の臨床には向かない んですよ。
どんなに理論が良くても。少なくとも私の周りにあった体外式の器械は、使ってみる気にならないぐらい操作が面倒くさそうでした。

 

(聞き手) RTXを使用するに至った経緯をお聞かせ下さい。
(小谷先生) 一番興味があったのは高頻度換気・振動です。
まだジェットベンチレータがあった頃に、ジェットを呼気側に乗せて、肺に入れるというよりは回路内のガスを全 体的に揺らすといった形で使っている時期があって、効果がある患者さんも中にはいたわけですね。救命までは辿りつけなくても。RTXが起こす振動は、 HFOほどHigh Frequencyではないですけども、そこそこ揺れるので、勿論興味があった。

留学中に、RTXと違うタイプのベストを使っての実験を手伝ったことがあって、その時にも体外式の振動で、ある種の呼吸不全モデルは改善するんですね。少 なくとも急性期は乗り切れると判っていたので、一番最初は振動換気がどれくらい効果があるのか。正直、小児でやっているようなコントロールベンチレーショ ンだとか、あるいは今の通常型の人工呼吸器に併用するとか、自発呼吸に同期させて最初からできるとは思わなかったんです。むしろ振動換気を旨く取り入れる ことで、今のベンチレータの限界を超えられるかどうかに一番興味があったんです。

 

エクスペリエンス  

(聞き手) RTXを具体的にどういった症例で使用されますか? 

(小谷先生) Secretion Clearance※というのは、RTX初心者が入るには一番簡単なモードなんですけども、一番僕が驚いているのは、肺気量が減少してしまった患者さんの肺気量を獲得する上でRTXが有効だということですね。

 

具体的に僕らがいくつか発表してきた中で、慢性呼吸不全の急性増悪、ARDS、肺が虚脱してしまった症例、通常のタイプの陽圧換気でAPRVを含めて最新の人工呼吸療法を行っても肺が開かなくなってしまった症例。これに対してRTXが非常に良く効いて、虚脱肺が再開通し、肺気量が戻って、酸素化が戻って、結果的には離脱できて退院した。そういう症例を今までも沢山経験しています。RTXが、胸郭の中の肺、換気エリア、ガス交換に携われるエリアを獲得できるための非常に優れた方法だということが僕らにとっては一番印象的です。おそらく他の器械より向いている使い方だろうなというふうに思っています。

 

(聞き手) RTXの前(昔の体外式人工呼吸器)のチェストレスピレータや鉄の肺といったものは、ご覧になられたことはありますか?
(小谷先生) さすがに知らないですね。鉄の肺モドキのようなものを一度大学の倉庫で見かけましたが。装着するのにすごく大変なものというのは、一般の臨床には向かない んですよ。どんなに理論が良くても。少なくとも私の周りにあった体外式の器械は、使ってみる気にならないぐらい操作が面倒くさそうでした。

 

(聞き手) 今おっしゃった患者さんというのは、全国各地の病院に沢山いらっしゃると。
(小谷先生) いると思います。特に、時間の経ってしまった症例ですね。急性期に肺が虚脱してしまって、肺気量を失っている症例は開ける方法はいくらでも(あると思うの ですが)。例えば、Recruitment maneuverや、APRVだとかが、それに向いていると思います。
時間が経ってしまって、ある程度固定しつつある症例は、従来型の人工呼吸器を使った、従来知られているやり方は効果的でないですけれども、そういう時のレスキューにRTXが使える。日本は長寿国ですし、結核後遺症の患者さんも沢山いらっしゃると思います。

(聞き手) 逆に、今までの先生のご経験の中で、上手くいかなかったケースというものはありますか。
(小谷先生) 失敗ということは、効果がなかったという言い方をすれば、いくつかありますが、それも僕らの(RTXの)使い方がまだ判らない。特に、大人の症例では、ど うやって使っていくか、ある程度トライアンドエラーなところがあって。失敗したという程の症例はないですね。聞くところによると、通常型の人工呼吸器を 使っている重症例に、ただRTXにかぶせて換気をしてしまって、それが原因でトラブルがあったということを噂話に聞いています。しかし、生理学的に考えて やっていけば、そんなに失敗はしないと思いますね。

ただ、一番困るのはキュイラスが体にフィットしない、キュイラスがつけ難い症例というのが、意外に多いですね。外科疾患でドレナージされているような症例はやっぱりつけ難い。障害のほとんどが横隔膜近辺に起こってくるので、横隔膜の境目あたりをキュイラスでカバーしたいのですが、残念ながら肺の疾患でもお腹の疾患でも横隔膜近辺は物が溜まる場所なので、ドレナージを一番するんです。格好の症例なのに、キュイラスがつけ難い。傷口にキュイラスの縁が当たらないようにとか、ドレーンチューブを潰さないようにタオルをビニールに包んで当てるとか試行錯誤の連続ですが慣れて来ると以外と簡単に対処方法が浮かんでくるのです。 

 

(聞き手) 実際にチューブをキュイラスの圧力でつぶしてしまうということですね。
(小谷先生) そうですね。

 

※S/Clearance(セクレーションクリアランス)
RTXが保有するモードの一つ。バイブレーション(振動)とコフ(擬似咳)で動きます。
このモード使用により、排痰効果があるという発表が多くされています。

 

 

 

フィーチャー

(聞き手) 今後、RTXを使っての症例で試みてみたいというのはございますか?

(小谷先生) 究極を言えば、Negative Pressureだけで人工呼吸ができるような病気だとか、疾患に関するノウハウを得たいですね。正直いうと動物実験をやりたいですし、臨床的にも解決しなければならない問題もいくつかあると思います。大人の症例で、子供に比べ、かなり胸郭のコンプライアンスが落ちていて、それプラス、炎症だったり肺水腫だったりということがある症例で、こういう非侵襲な器械がもう少し使えるようになればいいなと。 実は、それを探る意味でNPPVとRTXの併用というのを試し始めています。NPPVはCPAPつけてやっているだけで、いつ外しても大丈夫、外してみたらRTXだけで、できたという形で、上手くいくかもしれない。それが今、試していっている可能性ですね。それが突破できれば、たぶん最初からRTXだけでいけますという症例が見えてくると思いますね。

 

(聞き手) 挿管はなるべくしたくないということで、NPPV+BCVということをやっておられると思いますが、2つを組み合わせる、ということで挿管率というのは減ってきたのでしょうか?
(小谷先生) ひとつはですね、いつ挿管するか。あるいは、いつ人工呼吸を始めるかというタイミングだと思うんです。Noninvasiveという器械が出たことで、人工呼吸のタイミングは明らかに早まると思います。いくつかの疾患ではNoninvasiveの方が生命予後が良いというエビデンスも出てきていますが、たとえば鬱血性心不全だったりCOPDの場合は、挿管回避が必ずアウトカムを良くするということも判っています。 だとすれば、RTXにしてもNPPVにしても、患者さんに装着するタイミングを早くすることによって、新しい治療域というものが生まれ、その結果、入院期間が短くなる。医療費が削減できる。あるいは患者さんの生命予後が最終的に延びるということが示されれば増えてくると思うんです。

 

(聞き手) 今後RTXを使ってみようという医師の方にアドバイスなどありますでしょうか?
(小谷先生)ARDSの死亡率がこの40年位で70%から30%に下がってきている。その間に、何が治療法として変わったか?例えば、薬物療法ではエビデンスのある薬は何ひとつないわけです。人工呼吸器は確かに変わりましたが、人工呼吸器戦略は何か変わったか? 結局、この40年間に明らかに効果があった、進歩したことはスタンダードケアなんです。患者さんをいかに安定した管理に持って行くか。そのためには、何をすれば良いか。例えば、誤嚥性肺炎を防止するために患者さんをちゃんと座らせましょう。横にフラットに寝かせるのではなくて、上半身を30度から40度で上げましょう。口腔ケアをきちんとやりましょう。抗菌剤は理屈に則ってやりましょう。そのひとつひとつの手技をいかに出来るかが大事なんですね。感染管理、感染防御みたいなスタンダードプリコーションも含んでいると思います。

 

その上で、RTXを使うわけですが、なぜ効果があるのか、どういうところに効いているのか、生理学的な作用機序をよく理解して頂きたい。RTXを通常型の人工呼吸器の代替品と思って使ったら、また通常型の人工呼吸が戦略としてできていない所は、まず失敗するだろうと思います。通常型の陽圧式人工呼吸器のデメリットをRTXがカバーできるのかどうか、そういう疾患がどこにあるのか、どういう疾患ができるのか、この患者さんに良いかを多方面からディスカッションして戦略を練って、ひとつひとつの症例をキチッと評価して反省して次に活かしていくということが大事です。

 

そして、その呼吸療法をできるだけスタンダードケアに近いような使われ方をしてほしい。ある特殊な症例に、特殊なタイミングだけでやるのではなくて、皆さ んが気楽にやっておられるような酸素療法の気分で、RTXは使えるんだというベースも作ってもらいたい。そうでなければ、RTXの特殊性が中々皆さんに伝 わらないでしょうし、RTXを普及するに当たってベーシックに、どんな患者さんでも、これだけは気をつけなければならないというアルゴリズムができないと 思います。

 

1日に3例も4例もやれるようなユニットでまず始めて頂きたい。できるだけ、最初、ある同じメンバーで、しかも広めていく際もメンバーが関わって自分たちのチームに広めていって頂きたい。

後はもう、チャレンジしかないと思います。自分たちが慣れたら、ステップアップした症例に試していくことになると思います。その場合には、なぜ効果があるのか、何をモニタリングすれば効果が評価できるのかをスタッフで徹底的にディスカッションする。

 

新しい医療行為というのは、常にエビデンスという話になるのですが、エビデンスというのは、ある程度、臨床にやってみて、その後で初めて効果があるかない かという判断をするわけで、最初からエビデンスがあるような新しい治療法はないわけですから。エビデンス云々ではなく、RTXがもたらすであろう生理学効 果のメリットを正確に評価し、患者さんのメリットに繋がるのであれば、チャレンジして頂きたい。
その時に安全に使えるかどうか。そのユニットは使い慣れているかというところが、最終的な判断材料になるんで、そういったインフラが、スタンダードケアが できるところでチャレンジをどんどんして頂いて、どこの病棟でも、どこの病院でも、どこの地域でも使えるようなノウハウを発表して頂きたいなと思います。

キーポイント

(聞き手) そのチャレンジの際に、どうしても症例的に判らないことがあれば小谷先生にご質問をさせて頂くというのは可能でしょうか?
(小谷先生)  勿論、僕も大変興味があるので、ご協力できることはいつでも、ご協力させて頂きたいです。最低限の礼儀として、ご自身の所属や名前などを明かして頂ければ、メールでも電話でも、僕は何でもさせて頂きたいなと思います。逆に教えて頂きたいので、是非お願いします。

 

(聞き手) 体外式のRTXが日本ではまだ広まっていない状態では、と思うのですが、RTXが体外式ということで抵抗感があるんでしょうか?

(小谷先生)  やっぱりあるんじゃないでしょうかね。

確かに人工呼吸は体外式から始まりましたけど、あれは非常に特殊なポリオです。肺の実質が痛んだ、そういう疾患ではないわけですよね。所謂、呼吸筋がうまく動かない、基本的には肺は綺麗な、柔らかい正常な肺が対象でした。人工呼吸の不幸は、肺が問題になった人から始まらなかったところです。そのために遠回りをしてしまった。その後、肺が悪い人に悪くない人の人工呼吸を乗せて行ってしまい、VILIという知識のない時代にそれが非常に広まって、人工呼吸は悪にされてしまった。人工呼吸をやると肺が潰れる、肺が壊れると話になってしまった。生理学的に合っていない人工呼吸をしてしまった。それが、この40年、50年の人工呼吸の歴史だと思うんです。

 

ただ、今、臨床の現場で働いている人間というのは、一番最初のポリオの時代を知らない人間が殆どです。おそらく指導側にまわっている先生方の中にも、人工呼吸の「鉄の肺」を知っていらっしゃる方は減っていると思うんです。ですから今、この時期に体外式人工呼吸器が出てきたということは、歴史的には再来ですけど、現場の人間にとっては初めて見るものなので、誰でも恐れ、戸惑いがあると思うんです。抵抗感のほとんどは、どうやって使ってよいか分からない無知からくると思うのです。

無知を解消するには、適当な教科書もないので、チャレンジしていく以外方法はないと思うんですね。チャレンジすればするほど、いろんなことが判ってきますので、抵抗感は薄れていくと思います。

 

(聞き手) RTXのような体外式人工呼吸器がこれから増えてくると思われますか。

(小谷先生) 増えると思います。そのためには2つポイントがあって、まず軽傷な患者さんから始めること。それは、別に人工呼吸しなくてよい人にしろと言っているのでは なく、スタートラインを速めろと言っているんです。明らかに、その人は将来的に人工呼吸が必要になるんだけれども、その病態が早いうちに人工呼吸してあげ たほうが、病態の悪化が防げる人がいるということですね。そういう時にRTXだとかNPPVというのは効果があるというふうに思います。

もうひとつは、従来型の人工呼吸器が効果的でない場合、そのサポートとして使えるかが広がるラインだと思います。本当は、RTXだけで最初から最後までで きるような疾患があれば、それが一番インディケーションを決めたりですね、治療する上で簡単に広まる方法だと思うんですが、残念ながらそれがあるかという と、大人の分野で中々そういう分野は思い浮かばないですね。ですから、もうちょっと研究していかないといけないと思います。最後のタイプがないとすると、 RTXの位置付けが中々難しい。そこそこな人工呼吸管理ができるユニットで、ある程度、患者さんが集まってきて、みんなの意識が高いところで使わないと、 良い使われ方がない。そこを突破すれば、潜在的な患者数はかなりいると思っています。

アドバンスド・ユースド   小谷透先生インタビュー

(聞き手) 「呼吸ケア」9月号に、RTXが医療現場で積極的に活用されている事例が紹介されていたのですが、体外式というものは認知されてきつつあるのでしょうか?
(小谷先生) それはあると思いますね。Secretion Clearanceというのは、一番安全に使って、効果が実感できるものだと思うんですね。我々、手術翌日の人にも、勿論あります。それは慣れているユ ニットだからというのもあります。使って非常に核痰の排出も良くなって、挿管を回避できた症例はいっぱいあります。そう言う使い方は、RTXを使って新た に作ったカテゴリーで、Noninvasiveだからできると思うんですね。挿管してジェットベンチレーションというのは絶対無理ですから。抜管したらで きないわけですから。


そういう意味では、体外式非侵襲というのは新たなシーンに入ったと思います。

ただ、それだけでRTXを使うかというと、そこは一番問題だと思います。最終的には人工呼吸器ですから、もう少しアドバンスな使われ方を、自発呼吸を効果的に行っていく、自発呼吸運動を補助するための器械として使われてべきだと思います。

 

おそらく、肺気量を増やし、それによって肺の中のガス交換が良くなって、酸素療法がいらなくなっていく。そこがこの器械が一番期待されているところだと個 人的には思っています。そういうふうに呼吸器ケアの記事がなっていると非常にあいがたいなあと思うんですが。世の中がそうなって来てくれたら、これは揺る ぎないひとつの分野を確立すると思うんですね。

 

小谷先生今は病気という認識も明らかな基質的な問題から予防医学まで、だいぶ広がってきています。病気を予防するような診療法があったら、それを積極的に取り入れ て、結果的に病気の発生をなくして医療費を抑えようという考え方がある。そういう中に、僕は呼吸器疾患の予防法としてRTXの活路があるんじゃないかと 思っています。日本は世界的に見ても未曾有の高齢国で、最後には呼吸器疾患で亡くなってしまいますから。

高齢者じゃなくても、普段の肺の状態を良好に保つために、感染から守るだとか、気道の正常化をしてあげるとか、肺が潰れているのを治してあげるだとか、そ ういったことのケアとしてRTXが気軽に使えるような環境ができてくれば、それは数字としてだせるでしょうし、一番、日本の医療の現場に求められているん じゃないかなと思うんです。 僕のゴールは最終的にはそこにあるんです。

 

(聞き手) 小谷先生、ありがとうございました。

(小谷先生)  ありがとうございました。

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