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第60回日本新生児成育医学会・学術集会 教育セミナー16
「新生児に対する吸入酸素濃度の自動コントロールの有効性」

掲載:2015年11月 / 文責:レスピラトリ・ケア部

2015年10月23日(金)~25日(日)、いわて県民情報交流センター「アイーナ」、盛岡地域交流センター「マリオス」、ホテルメトロポリタン盛岡にて、第60回日本新生児成育医学会・学術集会が開催されました。学会最終日の25日、ホテルメトロポリタン盛岡本館4F 早池峰 第8会場にて、教育セミナー16を共催いたしました。

今回のセミナーでは、座長に長谷川 久弥先生(東京女子医科大学東医療センター 周産期新生児診療部・新生児科 臨床教授)を、また演者にはイタリアより、クラウディオ ミグリオーリ先生(スペダーリ市民病院 新生児学・NICU イタリア ブレシア)をお招きし、「Effectiveness of Automatic Control of Inspired Oxygen for Neonates」(新生児に対する吸入酸素濃度の自動コントロールの有効性)を、ご講演頂きました。

以下、ご講演要旨をご紹介いたします。

日時:平成27年(2015年)10月25日(日) 12:00-13:00

会場:ホテルメトロポリタン盛岡本館 4F 早池峰 第8会場

題名:Effectiveness of Automatic Control of Inspired Oxygen for Neonates
新生児に対する吸入酸素濃度の自動コントロールの有効性

座長:長谷川 久弥先生
東京女子医科大学東医療センター 周産期新生児診療部・新生児科 臨床教授

演者:クラウディオ ミグリオーリ先生
スペダーリ市民病院 新生児学・NICU イタリア ブレシア

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■スライド【1】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

呼吸器疾患において酸素療法は一般的に使用されている。しかしながら、新生児領域において、高酸素血症や低酸素血症は特に回避しなければならない。なぜなら、低酸素血症は中枢神経系などの臓器に悪影響を与える。
一方、高酸素血症はBPD(肺異形成)、ROP(未熟児網膜症)といった副作用を引き起こす。

■スライド【2】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

この問題についてTin Winらの報告(2007年)1) によると、早産児に対しROPを回避するためには動脈血酸素分圧が80mmHgを超えないように維持することが重要であると示された。

■スライド【3】【4】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

Kapadiaらは(2013年)、在胎24~34週に出生した児に対し、スライド【3】表に示すSpO2を維持するために、2群に異なる濃度の酸素投与を10分間実施した。
高酸素投与群(100%から下降)と低酸素投与群(21%から上昇)の2群を比較したところ、2群のSpO2目標値は同様であるにもかかわらず、酸化ストレスにより患者転機に差が生じることが報告 2) された。

■スライド【5】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

ヨーロッパでは、2013年にガイドラインEuropean Consensus Guidelines on the Management of Neonatal Respiratory Distress Syndrome in Preterm Infants 3) をUpdateした。
急性期において、酸素投与による副作用を防ぐために①SpO2の目標値は90%~95%に設定され、②サーファクタント投与後には、高酸素血症を防ぐために、SpO2を注意深くモニタリングし早急にFiO2を低下させる事、③出生後期ではSpO2の変動を避ける事が推奨項目となっている。

■スライド【6】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

Phyllisら(2010年)の報告 4) では、非急性期においてはSpO2が目標値は94%以下で管理し、SpO2を80-85%となることを防ぐことで患者転機が改善する可能性が示された。

■スライド【7】【8】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

大変興味深い事に、いくつかの研究 5) は、低SpO2群(目標値85-89%)と高SpO2群(目標値91-95%)を比較した場合、高SpO2群のほうが、低い死亡率であることを示している。
これまでの研究からは、現時点においてはSpO2の目標値は90%-95%であることが賢明の様である。

■スライド【9】【10】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

しかしながら、この目標値で呼吸管理もすることは決して簡単ではない。

スライド【9】TABLE2は、SpO2を目標範囲内で管理できた時間の割合(%)を調べた85名の患者を対象としたマルチセンタースタディ 6) であるが、半分近くの時間は目標範囲外で管理されていたことがわかった。また、最近の報告としてHigh SpO2とLow SpO2の2群で比較したケースでも、High SpO2群は多くの症例が目標範囲内で管理できた一方、Low SpO2群はほとんどの症例で目標範囲外、特に上限を上回る管理が行われていた。可能性としてその原因はスタッフの数にあるかもしれない。

■スライド【11】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

こちらは看護師対患者の比率(1:1~1:3)とSpO2が目標範囲内で管理できた割合を表にしたもの 7) であるが、1:1では38%であったものが、1:3では15%へと低下した。しかしながら、現実に1:1で看護することは不可能であり、他の対策を立てなければならない。

■スライド【12】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

解決方法として、クローズドループFiO2システムがある。

クローズドループではコンピュータ制御によるSpO2のモニタリングとブレンダーの調整によるFiO2の自動調整が行われる。実はこれらの研究は1970年代から行われていた。

■スライド【13】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

操作者がSpO2の目標値を設定することにより、コンピュータ制御によってパルスオキシメータの値がコンピュータに送られ、アルゴリズムに従ってFiO2が適正値かが判断され、必要な場合にはFiO2を変化させる。そのFiO2が操作者によって設定された目標SpO2範囲外である場合、また先程と同じ作業がコンピュータ内で繰り返される。

■スライド【14】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

クローズトループでFiO2をコントロール出来るシステムを持っている人工呼吸器はCareFusion社製AVEAに搭載されているCLiO2のみである。
ヨーロッパをはじめ、オーストラリアや多くのアジアの国々で既に販売されている。CLiO2はAVEAのオプション機能でSpO2モジュールから出ているケーブルをAVEAに接続することで使用出来る。

■スライド【15】~【19】(左から順に。スライドをクリックすると拡大表示できます)


では、どのように動作するのか?

図に示されるように、SpO2が目標値未満に低下した際には自動でFiO2を上昇させ、SpO2目標値の上限を超える様な動きにはFiO2を低下させる、この一連の動作をアラームが鳴動する前に自動調整する。ただし、ユーザーが任意にアラーム値を設定することも可能である。

■スライド【20】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

クローズドループFiO2システムの開発にはMASIMO社が関係している。
Masimo SETTM によって正確なSpO2データを人工呼吸器に供給している。CLiO2は、1秒毎にSpO2を評価し、FiO2の条件を変更するか否かを判断する。

■スライド【21】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

クローズドループFiO2が臨床で初めて使用されたのは2001年にClaure Nら(マイアミ大学Bancalariのグループ)の報告 8) である。
ELBW(極低出生体重)14名に対し、クローズドループシステムで2時間、手動操作(SpO2をモニタリングし、FiO2を調整するためだけの専任看護師)も同様に2時間人工呼吸管理し、FiO2の調整を評価した。結論としてクローズドループシステムの方が専任看護師と比較し、目標範囲内を維持することができた。看護師対患者比を1:1にして、FiO2を調整する専任看護師を配置することは当然、現実的ではない。

■スライド【22】【23】【24】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

2009年にも同様の比較 9) がClaureらによって行われたが、図のように、クローズドループの方が目標範囲内で管理できた事を示されている。また、95%以上の上限値においてもクローズドループシステムの方が少ない時間で管理できた。
しかしながら、目標範囲下限値においては手動操作の方が少ない時間で管理出来ている。SpO2と時間の割合(%)を比較してみるならば、FiO2、SpO2共に目標範囲内(88~95%)であるが、クローズドループシステムの方が低値であることがわかった。
さらに、70%未満や98%以上と言った急激な変化についてもクローズドループの方が少ない時間で管理できた。

■スライド【25】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

クローズドループシステムでは急激な変動が極めて少なく、また、1秒毎にモニタリングしているため、異常値を放置するようなことも起こりにくい。

■スライド【26】(スライドをクリックすると拡大表示できます)

■まとめ

  • 酸素は、新生児の呼吸不全の治療のために広く使用される薬剤である。
  • 酸素の副作用を低減するためには、SpO2を慎重にモニタリングする事が求められ、SpO2を目標範囲内に維持し、SpO2の変動を回避しなければならない。
  • クローズドループFiO2システムは、目標範囲内のSpO2を維持することに寄与する。SpO2の変動や手動制御と比較して重度の低酸素血症または高酸素血症の時間を減少させる。
  • クローズドループFiO2システムは、スタッフの業務を軽減し、他の業務のための看護時間をより効率的に使用できる可能性がある。
  • 将来の研究の目標はSpO2の最適化が、ハイリスク患者の転帰を改善し、酸素の副作用を低減するのに役立つかどうかを評価することである。

(※本ホームページ掲載についてMigliori先生から許諾を得ています)

ミグリオーリ先生のご講演後には活発な議論が行われ、CLiO2の関心の高さを認識いたしました。

本邦では2015年9月に薬事承認を受けた新機能CLiO2 (Closed Loop Inspired Oxygen)ですが、今後、医療スタッフの皆様にご使用いただけるよう準備を進めております。

最新テクノロジーCLiO2を是非ご評価いただきます様お願い申し上げます。

参照文献

  • 1) Tin W, et al.  Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed 2007;92:F143
  • 2) Kapadia VS, et al. Pediatrics 2013;132;e1488
  • 3) Sweet DG, et al. Neonatology 2013; 103:353
  • 4) Phyllis A, et al. Chin Med J 2010; 123(20): 2938-2942
  • 5) Thomas M Berger, et al. Neonatology 2013;104:265
  • 6) James I. hagadom, et al. Pediatrics 2006: 118; 1574
  • 7) Sink DW, et al. Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed 2011;96:F93
  • 8) Claure N, et al. Pediatrics 2001;107:1120
  • 9) Claure N, et al. J Ped 2009;155:640
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