掲載:2016年2月 / 文責:レスピラトリ・ケア部 ベンチレータチーム
CLiO2とはClosed Loop Inspired Oxygenの略で、患者さんのSpO2をモニタリングしながら目標範囲を維持するために吸入気酸素濃度(FiO2)を自動でコントロール(クローズドループ制御)する最新テクノロジーを持った機能です。
- 開発背景 -
これまで行われてきた呼吸管理では、先生から指示された目標SpO2に従って手動でFiO2をコントロールしていました。
アラーム対応の遅れ、FiO2の不適切な調整により、低酸素や高酸素による副作用(慢性肺疾患、未熟児網膜症など)が問題となっていました。
吸入気酸素濃度自動コントロールシステムCLiO2は、マイアミ大学、Masimo社、CareFusion社によって共同開発されたアルゴリズムによって、SpO2測定値を利用して患者さんに供給されるFiO2を自動でコントロールします。
このシステムによって、患者さんのSpO2値が目標のSpO2の下限値から上限値の間で維持されるよう、供給されるFiO2を継続的に調整することで、SpO2の一過性の変動、高酸素/低酸素への暴露を低減させることが期待されます。
- CLiO2 Technology -
CLiO2搭載の人工呼吸器AVEAではニューマチックは一新され、CLiO2専用のGDE(ガスデリバリーエンジン)を搭載することにより、ブレンダーから直接ガス供給を行うことによってSpO2の変化に素早く対応することができます。CLiO2では患者さんのSpO2を1秒ごとに更新し(86,400回/日)、必要に応じてFiO2の変更を10秒以内に行います。
また、SpO2モジュールにはMasimo社製、Masimo SETを採用し、動脈血とそれ以外のノイズ(静脈血、組織、骨、光)の識別が可能な信号抽出技術を用いることで、信頼性の高いモニタリングが可能です。 また、Masimo SETは体動に強くSpO2の不良アラーム頻度が少なく、高酸素血症や徐脈の検出に優れています。
- CLiO2は赤ちゃんにやさしい呼吸器です -
未熟児網膜症、呼吸窮迫症候群RDS、慢性肺疾患の増悪に高濃度の酸素が一因であると言われています。先生が目標値として設定しているSpO2レンジ を維持するために、人工呼吸管理中のFiO2の調整には細心の注意が必要でした。
CLiO2は1秒ごとに患者さんのSpO2モニタリングを更新し、必要に応じて10秒以内にFiO2を調整しますので、手動管理に比べSpO2上昇、下降への対応にタイムラグが少なく赤ちゃんにやさしい機能と言えます。
SpO2目標値を維持する時間が手動に比べて長く、 FiO2も低く抑えられたという研究報告1)もあり、CLiO2によって高酸素状態や低酸素状態への暴露を最小限にする2)ことが期待されます。
- CLiO2はスタッフにやさしい呼吸器です -
例えば、受持ち患者さんの病態が悪い場合、呼吸管理中の患者さんのSpO2アラーム対応に時間が掛ってしまう事があるかもしれません。また時には、先生が受持ち患者さんの処置をしている際、SpO2アラームが鳴ることがあるかもしれません。
SpO2が安定している患者さんの場合、FiO2の調整はそれほど必要とはしませんが、SpO2が不安定な患者さんの場合、FiO2の頻回調整が必要です。研究報告1)によると24時間の呼吸管理でFiO2を手動で変更した回数をCLiO2管理群と手動管理群で比較した場合、圧倒的にCLiO2管理群が少なかった(10回 vs 112回)とのことです。
また、FiO2変更後に患者さんのSpO2を監視する時間を考慮すると、CLiO2の使用によって看護業務の軽減を期待できることから看護師さんに優しい機能と言えます。さらに、CLiO2では操作者の受持ち患者さんの数、経験値等のバイアスに影響を受けず、先生の指示に対して同一の管理が可能となります。
ご使用方法は極めてシンプルです。CLiO2のご使用にあたり、設定して頂く項目は目標SpO2値の上限と下限、バックアップ時のFiO2、各種アラームとなります。現在、皆様に臨床でご評価いただけるよう、準備を進めております。ご評価いただく機会がございましたらぜひ、最新テクノロジーをご体感ください。
また、2016年2月18日~20日に開催されます第18回新生児呼吸療法モニタリングフォーラム3日目(20日)の9時~10時30分にサン・アルプス大町にて企業企画セッション7「赤ちゃん・看護師みんなに優しい酸素濃度自動コントロール機能がついた人工呼吸器」を共催させて頂くこととなりました。
第一演者には長野県立こども病院 新生児科 部長 廣間武彦 先生をお迎えし、「なぜ、酸素濃度にこだわるのか?再確認しよう」についてご講演いただきます。
さらに、第二演者としてAVEA人工呼吸器開発者の一人であるマーク・ロジャース氏(CareFusion社)に「なぜ、酸素濃度自動調整機能(CLiO2)は開発されたのか?<通訳付き>」をご講演頂きます。
第18回新生児呼吸療法モニタリングフォーラムにご出席予定の先生方におかれましては、ぜひご聴講頂きます様、お願い申し上げます。
なぜ、酸素濃度にこだわるのか?再確認しよう 演者① 廣間 武彦先生
なぜ、酸素濃度自動調整機能(CLiO2)が開発されたのか Why Closed Loop Control of Oxygen was Developed 演者②マーク ロジャース先生 Senior Product Manager Respiratory Technologies Ventilation CareFusion, a BD Company |
【参考文献】