掲載:2009年8月 / 文責:クリティカル・ケア部
2009年7月13日(月)日本周産期・新生児医学会学術集会(名古屋)で、ランチョンセミナー「Amplitude integrated EEG monitoring in Neonatal Intensive Care-Current State of the Art」が開催されました。
既に先進国における新生児の脳波モニタリングaEEGによる測定が一般的に行われている中、日本にも脳波のモニタリングが進んできております。その中で今回セミナーが開催されました。250名収容の会場には、300名を超える参加者が集まり、聴講されました。
座長は、側島久典先生(埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター新生児科教授)。
講演者は、aEEG研究において世界で最も著名な研究者Lena Hellstrom-Westas,MD,PhDによる発表でした。
この講演内容を基に、「aEEGとは何か」をご紹介いたします。
今回、ご招待をいただき大変名誉なことであり、側島先生に感謝申し上げます。これまで4度、日本に来ましたが本当に素晴らしい国だと思います。
日本ではこれまで長く大変進んだモニタリングが行われており、特に未熟児のEEGについての見識は大変深いと認識しています。今回は角度を少し変え、脳のトレンドをモニタする「aEEG」の現状をご紹介いたします。
「aEEG」の現在の状況を説明するということは大変難しいことです。なぜなら、この領域が発展を続けているからです。aEEGは、全く新しい手法というわけではありません。
Westas教授 (NICU, Uppsala Uni. Sweden)
1960年代、Douglas MaynardとPamela PriorによりaEEGを記録できる当時は脳機能モニタと呼ばれた機械がロンドンで製作されました。この脳機モニタにはディスプレイはなく、感熱紙にaEEGが記録されるというものでした。
紙への記録速度は1時間で6-30㎝でした。rawEEGは表示される事はなく、インピーダンスは連続的にモニタされていました。aEEGは、これを最初に様々な発展を遂げていきています。
ここではaEEGのコンセプト及びEEGとの違いを簡単にお示しします。
従来のEEGでは、赤ちゃんについての多くの情報をえられます。背景脳波活動、非対称性因(Asymmetries)、脳半球間の同期生、PRSW(中心部陽性鋭波)、てんかん発作パターンなどです。
aEEGでは大きな情報フィルターはありません。情報フィルターを通すことで、非常に単純化された背景脳波活動が示されます。
てんかん発作(Seizurures)、背景脳波パターンの変化、睡眠覚醒周期(SWC)といったものを見る事ができます。これらは、NICUのスタッフにとって有益な情報です。aEEGはパターン認識に基づいて、読み取ることを学びます。Full EEGを見ることはありません。
この方法の大変優れているところは、数時間にわたり、また、しばしば数日にわたり、患者さんの妨げにならず記録できるのことです。最近のaEEGでは、チャンネル数は減り、デジタルでデータを保存し、後で記録を分析することが可能です。
-- EEGとaEEGのアルゴリズム --
-- NICUでのaEEGの広がり --
NICUでaEEGがどのくらい使用されているかはっきりとはわかっていません。あくまでも推定値ですが、お示しします。
Australia, Denmark, New Zealand, Sweden, The Netherlands: > 70-80 %
Finland, France, Japan, USA: < 30-50%
オーストラリア、デンマーク、ニュージランド、スウェーデン、オランダでは70-80%でaEEGを使用しています。フィンランド、フランス、日本、アメリカでは30-50%の使用状況でしょうか。先進国、西欧諸国について、aEEGが全く使用されていないということはないでしょう。そして、現在の使用状況はどんどん増えています。
我々がaEEGの使用状況について知り得る情報としては、唯一2007年に発表された論文がありますのでご紹介します。
オ-ストラリアとニュージーランドの新生児専門家による調査結果です。新生児仮死正規産児を評価するために何を使用するかについて質問したものです。殆どのNICUで超音波診断とMRIが使われていたました。EEGは非常に多く使われ、aEEGは62%という結果でした。誰がaEEGを見るかという調査では、大多数が新生児専門家科医という結果でした。これについては議論の余地があると考えています。全ての記録を新生児専門医だけで見るのではなく、 神経生理学者、小児神経医も必要ではないではないでしょうか。
aEEGはシンプルなシステムですが、てんかん発作を見つけようとする場合、難しいことがあるからです。専門医のコラボレーションが新生児にとって良いことにつながると思います。
-- NICUで継続的にaEEGを使う理由 --
NICUで継続的にaEEGを使う理由は脳損傷を受けた患児が多いということです。神経学的な徴候は非常に繊細で判りづらく、新生児のてんかん発作の大多数は潜在性であります。脳機能の異常を早期に発見することで処置、及びその結果の改善を私たちは期待しています。
・神経学的な症候は非常にわかりづらい
・殆どの新生児てんかん発作は潜在性
・脳機能障害を早期に発見することで、処置及び予後の改善が期待できる。
研究においてaEEGを使う特別な理由に、使用が簡易であり、臨床的に有益な情報が得られることがあげられます。またベットサイドでNCUのスタッフが解釈できることも理由のひとつです。
・使いやすい、臨床的に有益な情報を提供
・NICUスタッフによるベッドサイドでの解釈
-- aEEGの作動機序 --
それでは、aEEGの古くからの作動スキームについて、デジタル化されaEEGできるまでを簡単にご説明します。
① Assymetric filter :EEGの3Hz以下、50Hz以上のEEG activityが排除されます。
② Semilogarithmic amplitude compression :振幅の感度を上げるため、スケールを変更します。
③ Peak rectifying + smoothing :-のピークを0地点+方向へ修正し平滑化する。
④ Impedance detector + overload detector :aEEGと並行して計測するインピーダンス
① Assymetric filter :非対称フィルタがEEGの3Hz以下、50Hz以上のEEGactivityを除きピークをカットします。
② Semilogarithmic amplitude compression :semilogarithmicスケールによって低振幅域を見やすくしますこれにより低振幅域actirityの感度が向上します。
③ Peak rectifying + smoothing :
rectifying(整流)によってトレースを全て上側に表示します。
smoothing(平準化)によってトレースを滑らかにしピークをなくします。
最後に、時間の圧縮を行い、aEEGが生成します。
では、実際の画面で確認してみましょう。
比較的健康な早熟児の正常な周波ですが、4時間のaEEG(上側)と、34秒のrawEEG(下側)が表示されています。aEEG表示に一定のリズムが見て取れます。おそろく睡眠覚醒周期でしょう。スムーズなパターンは健康な赤ちゃんであれことを表しています。ここでは本当に睡眠中であるか否かについては断言できませんが、rawEEGからの矢印で指し示すポイントが生成されたaEEGにあたります。上限がバーストを示し、下限がIBIを示しています。
このaEEGはとてもcrudeであり、この速度では個々のバーストをカウントすることはできません。
しかし、私が日常の臨床で使っているもののひとつでありまして、早熟児においてスムーズなパターンが見られるならば、たとえバーストがカウントできなくとも、私たちにとって大変好ましい状況です。aEEG波たとえcludeであっても、非常に多くの情報を提供してくれます。
下記より、実際のaEEG波形を見ていきたいと思います。
2009年7月13日(月)日本周産期・新生児医医学会学術集会 ランチョンセミナー
「Amplitude integrated EEG monitoring in Neonatal Intensive Care-Current State of the Art」の内容からWestas教授 (NICU, Uppsala Uni. Sweden)によるaEEGのトレンド解説をご紹介します。
上記にてご紹介させて頂きました『脳波測定の新トレンド aEEGとは何か』を収録した「第45回日本周産期・新生児医学会学術集会 教育セミナーⅥ」のDVDは、下記よりお申込みください。
【aEEG参考文献】
新生児におけるaEEGに関する様々な論文発表