掲載:2018年11月 / 文責:安全管理・技術センタ
公益財団法人 日本医療機能評価機構(JQ)では、医療事故収集等事業として、医療機関で発生した医療事故情報、ならびにヒヤリ・ハット事例の情報収集を行っており、その情報を公開しています。
本公開データの「事例検索」にて、『呼吸器』のキーワードで過去2年分のヒヤリ・ハット事例検索を行った結果、以下の5つの箇所で取り扱いに起因したトラブルが発生していることを確認しました。
今回は、最も報告が多い「呼吸回路」に関連したヒヤリ・ハット事例を一部ご紹介します。
【注意】
全ての人工呼吸器で発生した事例を確認しており、写真の弊社取り扱いのMONNAL T60ベンチレータはイメージ図です。また、発生率は弊社での確認・分類結果によるものです。発生傾向を把握する参考値としてご確認ください。
呼吸回路に関連したヒヤリ・ハット事例は、“回路の接続誤り” が最も多く、次いで “回路外れ・リーク”、“人工呼吸器のマスク関連” と続きます。
◆回路の接続誤り
誤接続や接続忘れといった “回路の接続誤り” は、フィルタ、人工鼻、ネブライザ、呼気弁など様々あり、製品、構成に応じた正しい呼吸回路の組み立て方法を理解することが重要であると分かります。
“回路の接続誤り“ について、特に注意が必要なポイントを以下に図示します。
◆回路の外れ・リーク
“回路の外れ・リーク” は、患者様に挿管・固定される気管チューブや気管切開チューブ、マスク、鼻ニューレといった患者様周辺(口元)で発生する事例が多く報告されています。
また、発生状況としては、吸引、体位変換など患者様への処置を行ったタイミングでの発生が多く報告されているため、これらの処置を行う際にはリークが発生していないか確認する必要があります。
“回路の外れ・リーク” について、特に注意が必要なポイントを以下に図示します。
これらの回路外れ、リークが発生しやすい箇所、発生しやすい状況を意識、注意しても、回路外れ、リークの発生を完全に防ぐことは中々難しいです。回路リークが発生した際にはその異常を検知する必要があり、人工呼吸器のアラーム(低圧、分時換気量下限等)を適切に設定することは非常に重要です。
◆人工呼吸器のマスク関連
近年増えているNPPV等で使用される人工呼吸器用のマスクですが、注意するポイントは大きく分けて2つあり、「マスクフィッティング」と「呼気ポートの有無」です。
「マスクフィッティング」に関してはリークが発生した事例や、リークを防ぐためベルトを締めすぎて皮膚障害が発生した事例が確認されています。多少のリークは許容して締め過ぎない等、適切なマスクフィッティングについて、教育等を行うことが効果的であると考えます。
次に「呼気ポートの有無」に関しては、呼気ポート(リーク孔)があるマスクと呼気ポートがないマスクがあり、人工呼吸器本体か回路内に呼気時にガスを大気開放する “呼気弁” を有している器械には呼気ポートがないマスク、 “呼気弁” を有していない器械には(そこから大気開放するため)呼気ポートがあるマスクを使用します。
これを間違えて接続した事例が複数確認されているため、機種に合わせたマスクの管理、使用を徹底する必要があると考えます。
弊社では、ヒヤリ・ハット事例をベースとした人工呼吸器の事故防止のための勉強会、機種毎の取り扱い方法、操作説明、使用上の注意などについて、スタッフ教育のお手伝いをさせていただいております。詳細につきましては最寄りの弊社事業所、担当者にご相談ください。