掲載:2017年11月 / 文責:クリティカル・ケア部
鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科 講師 中条哲浩先生 |
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[ 経歴 ] 1992年: 鹿児島大学医学部卒業 |
[ 学会専門医・資格 ]
日本外科学会:専門医・指導医 日本内分泌・甲状腺外科学会:専門医 日本内視鏡外科学会:技術認定医 日本消化器外科学会:認定登録医 日本がん治療認定医機構:がん治療認定医 |
近年、海外にて、副甲状腺を近赤外線カメラで検出する論文が多数報告されております。
日本国内においても 2017年日本外科学会にて、鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科 新田吉陽先生より、浜松ホトニクス社製赤外線観察カメラシステム pde-neoを用いて、副甲状腺の自家蛍光を検出した報告がなされ、赤外線観察カメラシステムの新たな使用方法として注目されております(Shinden Y et al. World J Surg. 41(6), 2017)。
そこで、鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科 中条哲浩先生に、PDEを用いた手技・観察のポイント等についてお話を伺いました。
甲状腺・副甲状腺という臓器について、教えていただけますでしょうか?
甲状腺は、食べ物に含まれるヨウ素を材料にして甲状腺ホルモンを作り、血液中に分泌する臓器です。
甲状腺ホルモンは、新陳代謝を調整するホルモンで、脂肪などを燃やして活動するために必要なエネルギーをつ
くり出したり、古くなった細胞を新しい細胞につくりかえたりして、からだを成長させたり機能を維持するため
になくてはならないホルモンです。
一方、副甲状腺は、甲状腺のすぐ裏側にあり、甲状腺の側部の上下2つずつ、合計4 つほどある臓器です(人によっては3個・5個存在します)。
名前を聞くと甲状腺をサポートしているように聞こえますが、まったくの別の働きをする臓器です。副甲状腺は血液中や体液中のカルシウム濃度を一定に保つ為に必要な臓器です。
カルシウムは、骨や歯に必要なだけでなく、心臓や筋肉を動かす、血液の凝固等、人体にとってとても重要なミネラルです。
副甲状腺を同定する際になぜ赤外線カメラが有効なのでしょうか?
副甲状腺は米粒程度の大きさの臓器であり、脂肪やリンパ節等との識別が非常に難しい臓器です。
そのため、術前にアミノレブリン酸(5-ALA)を投与して術中に励起発光させたり、術中にメチレンブルーという色素を静注して同定するなど、正確に検出するために様々な手法を用いた研究が行われています。
近年、副甲状腺が近赤外領域の自家蛍光特性があることが発見され、独自の蛍光検出器を用いた術中副甲状腺法が報告されております。(McWade MA et al. J ClinEcdocrinol Metab 99(12), 2014)。
副甲状腺の蛍光波長帯を調べてみると、ICGの蛍光波長帯と近い領域であるので、病院所有のpde-neoにて蛍光観察をしてみたのがきっかけです
どのように見えるのでしょうか?
副甲状腺の自家蛍光は極めて微弱です。ICGの蛍光を赤外線カメラで観察するときは、蛍光灯をつけていても観察ができますが、副甲状腺の蛍光は、蛍光灯を消さなければ観察することができないほど極めて淡い光です。
しかし、明瞭にその他臓器とコントラストの差が生じているので、簡単に副甲状腺を検出することができます。
しかもICG等の薬剤を用いずに、pde-neoをかざすだけです。
具体的に副甲状腺を検出したいシーン等はどのような時でしょうか?
副甲状腺腫瘍や、亢進症等でもニーズはありますが、副甲状腺自体が肥大しているため、pde-neo 等がなくても比較的同定は可能です。もっとも使用したいシーンとしては、甲状腺摘出術の時です。
熟練した外科医でも、全ての正常副甲状腺を視認することは難しく、見つけられない腺も少なからず存在します。近赤外線カメラは、甲状腺摘出術の際にほとんどの症例できちんと正常副甲状腺を同定・温存できるため、有効性を感じています。
それでは頻繁に術中無影等・蛍光灯を消して赤外線カメラで副甲状腺を観察しているのですか?
術中、甲状腺を摘出する前に副甲状腺を観察することもありますが、頻繁には行っておりません。
副甲状腺は非常に変わった臓器で、自家移植という手法が採られております。
いったん摘出した副甲状腺でも、小さく刻んで筋肉内に埋め込むことで、その機能を維持することができます。
そのため、術中に副甲状腺を視認できない場合に、摘出した甲状腺や郭清した組織に副甲状腺が付着・埋没していないかを赤外線カメラでチェックしています。もし同定できれば自家移植します。
観察時に注意していることはありますか?
副甲状腺の蛍光は非常に淡いので、さまざまな点に注意しています。
当該領域の今後の展望についてどのようにお考えでしょうか?
現在副甲状腺が光って検出が簡単になりましたが、実際に副甲状腺の何の成分が蛍光を発しているのかは判明していません。まったく副甲状腺が蛍光していないケースもまれにあり、症例や患者間の違いにより蛍光が観察できないケースもあると思います。
今後その領域をさらに検証をしていきたいと考えております。また、副甲状腺以外にも近赤外領域の強い蛍光を発する臓器があるかもしれません。赤外の蛍光観察の分野はまだまだ大きな可能性があるのではないかと思っております。
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