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第5回 国際新生児脳機能モニタリング研究会に参加して

日時:2010年1月21日~23日
場所:フロリダ州クリアウォーター 
アイ・エム・アイ株式会社 OR/CC部 津賀茂雄・人工呼吸器部 木下孝太郎

 

今年で数えること5回目を迎えた本研究会であるが、設立当初は当時ヨーロッパを中心に話題となっていたaEEGを主に取り上げた会議であり、新生児脳機能モニタリング会議という学会名だったが、今年から新生児脳モニタリング・脳保護会議と名称が変わり、今年の主な演題は低体温・NIRS・aEEGに関するものであった。規模は例年通りに200人前後というとこであろう。参加者の70%強が新生児科医であり、20%が小児神経医。アジア全体としての参加者は7%程度。委員会主要メンバーは10名程度で運営されている。今回弊社からは、脳機能モニタ担当・木下とNIRS、低体温療法装置担当・津賀が参加した。

 

 

持続脳波モニタリング関して memo

aEEGに関してはセカンドステージとして使用経験のワークショップと未経験のワークショップに分かれての講義があった。また小児神経医は2チャネル以上のモニタリングが必要としているのに対して、新生児科医は1チャネルでの説明が多かった。これは永遠のテーマであるが、どこを主に分析するかによる。しかし、1チャネルでは検出できない発作波もたくさんあり、最低でも2チャネルは必要であろうとする意見が一般に有力である。

 

ワークショップではCFM6000(1チャンネル)を使用してのデモがあり、初学者には受け入れやすいのは否めない。しかし発作を検視するのにある程度ビデオ録画(発作時に所見として観察される動き)が有益であるとの発表もあった。
あくまで生EEGが重要であるのは言うまでもない。実際に日本で順天堂奥村先生が学会発表でこれまで行っていられるようにGeraldine Boylan, PhD (University College Cork, Ireland)が発作か否かを問う質問形式で患者実動画を見せながらプレゼンを行った。結論としては発作か否かを分析するには2チャネル以上、さらに生データの必要性を謳っていた。
同じように小児神経科医の立場からSampsa Vanhatalo, MD, PhD(Hospital for Children and Adolescents University Hospital Helsinki Finland)はaEEG以外のトレンドを示し、周波数解析では困難なTotalBandPowerを示すことにより、波形の成分を見分けることで患者の発作状況を判断できるとしている。

一方、新生児科医の見地からMona Toet, MD, PhD(Wilhelmina Children’s Hospital Utrecht, The Netherlands)は常にCFM6000の使用における1チャネルの説明が多かったが、詳細発作部位の特定は厳しいとの説明も同時に多かった。

 

aEEGモニタリングを行う際に診るべき留意点について、ほとんどの先生方は以下のようにまとめている。
・cEEG(従来のEEG) vs aEEGの同時測定の重要性。
・発作波として重要なC3-C4を含めた頭部後部でのモニタリング。
・aEEGにおけるアーチファクト(ノイズ)の見分けはSWC(睡眠サイクル)によりある程度判断
できる症例がある。
・可能な限り、EEG,aEEG以外の脳機能モニタリングの徹底。 Ex.NIRS、血圧、酸素分圧等。
・MRI・CTは瞬間・断片判断であり、リアルタイムモニタリングの重要性。
・設置位置によってもaEEGは振幅範囲が変化する。
・観察のみの発作確認は30%以下と低い。
・HFO使用時のaEEGの低ベースラインは持続的に上昇する。
・Fpのポジションは比較的使用されるが、C、Pに比べて発作を逃す可能性があるかもしれない。
・1チャネルでも検出できるが、70-80%程度。左右の差異や発作箇所を特定することは困難。

  

どちらの先生も36週目からの新生児を指標としており、その前の超未熟児では脳発達に伴う発作波に似た現象が健常乳児にも生じることからあまり指標に入れない。HIE症例は0.7~2.7人/1000人中という報告もされていた。HIEに限らず、脳症を疑うべき患者には脳波モニタリングが必要である。

 

NIRSに関して memo

ワークショップと本編での教育講演、ポスター発表で4題がNIRSに関する発表があった。 ワークショップでは「近赤外分光法装置による最新の臨床応用」というタイトルで、オランダのユトレヒト大学新生児科教授Dr. Frank van Belが行った。
以下はワークショップ、教育講演からのメモ。

  

NIRS装置に求められるもの
・データの正確性、信頼性
・(電極の装着も含めた)使いやすさ
・測定結果の解釈のしやすさ

 

NIRSによる測定値
・rSO2 = 酸化ヘモグロビン÷総ヘモグロビン(酸化Hb+還元Hb) x 100(%)
・新しい指標? Cerebral fractional tissue O2-extraction: cFOTE
(SaO2-rSO2)÷SaO2

 

新生児領域におけるNIRSの適用
・HIE(低酸素性虚血性脳症) ・低体温療法
・HFJV/HFOV 
・iNO Rx. 
・ECMO 
・先天性心性チアノーゼ

測定値の割合
・静脈血75%、
・動脈血20%
・毛細管血5%

 

正常範囲(文献による)
・成人     67±8%(Misra 他, Neurol Res,1998)
66±8%(Yoshitani他、Anesth Analg,,2002)
・正常分娩児 61±12%(Weiss他、Pediatr Anesth, 2005)
・未熟児    71±7% (Van Bel他、Neonatology, 2008) 又は55~85%

 

危険値 
・40%以下 Hou他(新生児豚) ミトコンドリア/海馬(CA1)ダメージ Physiol Meas 2007
・33-44%以下 Kurth他(新生児豚) 機能欠陥(ATP低レベル) J Cereb Blood Flow Metab 2002
・40-45%以下 Dent他(開心術、新生児)MRI所見虚血部位 J Thorac Cardiovasc Surg 2002
・30~40%  aEEG所見 正常、血中乳酸値増加
・30%以下   aEEG所見 異常、血中乳酸値深刻な増加

 
提案/結論: NIRS値の急激な変化は新生児の脳内酸素の変化を反映している。rSO2 45%以下
は避けるべきである。

 

測定値に影響する因子
・光線療法 ・毛髪/体動 ・浮腫/血腫 ・aEEG電極 ・極小頭 ・手術中電気メス

 

NIRSによるモニタリングの実際
脳還流障害が起こると脳内酸素化が極端に危険にさらされる
・未熟児の顕著な緊張低下(脱力?)
・脳内オートレギュレーションの欠如
・PDA時の血行動態
・無呼吸による脱酸素飽和
それ故、32週未満未熟児の生後3日間はrSO2を測定すべき

 

rSO2(NIROではTOI、可能であれば左右2か所)の他、MAP, SaO2, HRをモニター上に一元管理することが望ましい。(aEEGデータがあればさらに良い。)

 

 

低体温療法に関して memo

低体温療法についても、ワークショップ、教育講演が行われ、Michigan大学小児科准教授・Dr. John Barkerを中心として
講演があった。以下は、講演からのメモ。

 

満期新生児の1000人に2~4人は仮死で出生する。
仮死の内、20~50%はHIE(低酸素性虚血性脳症)を伴う。
HIE患者の生存者の25%は一生涯、後遺症が残る。

 

低体温療法(目標温32~35℃)の効果
・グルタミン酸塩解放減少
・細胞内アシドーシス、乳酸蓄積減少
・内因性抗酸化剤保持
・ロイコトリエン産生減少
・脳浮腫防止
・アポプトーシス抑制
・脳内代謝減少

 

最近の新生児低体温療法に関し、4つのトライアル結果が発表された。
NICHD、Eicher、TOBYなど
・ローテク(低コスト)冷却法(ICEトライアル)でも、同様の効果は得られるか?
・全身冷却は選択的頭部冷却より効果はあるのか?
・低体温療法にaEEGは必要か?
・低体温だけで他の集中的な治療がなくとも効果が出るのか?
 
まだ、明確な回答が出ていないが・・・・
・全身冷却と選択的頭部冷却と効果に差はなかった?
・低体温療法はやらないよりやった方が効果はあった。だが、効果が出ない児もいる。
・aEEGも有用であるが、不慣れなDrが行うと、誤った判断を招く可能性もある?

 

低体温療法をすべきでない対象
・35週以下での出生時(安全性、効果が立証されていない)
・外傷、出血、脳脊髄損傷
・先天性CNS

 

低体温療法の合併症
・血小板減少 ・高血糖 ・洞徐脈 ・PT/PTT延長(フィブリノーゲンは正常)

 

低体温療法今後の展望
・薬物療法との併用で、どの薬剤に効果がでるのか?
・造幹細胞輸血併用。最終兵器?

 

その他

機器展示に関しては、小規模で脳機能モニタ・NIRS、体温管理装置などのメーカーが各数社づつ、計10社の展示があった。弊社の取り扱い商品としては、Care Fusion社のニコレーワンモニタが展示されていた。朝食は展示場で軽食が提供されたが、その時間帯に各分野のエキスパートの先生方がテーマごとにテーブル席を設け、フリーディスカッションできる場を設けていた。
今回、日本からは埼玉県立小児医療センター、名古屋大学から計4名の先生が参加されていた。

 

 

来年2011年はオランダアムステルダムにて2月に行われる。

事務局受付スタッフに日本人ドクターの参加はまだまだ少ないので、沢山の参加を期待しているとのこと。

 

(おわり)

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