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ヘリウム・酸素混合ガスの有用性 人工呼吸器アヴェアを用いた動物実験による検証

風船やスキューバーダイビング用のガスボンベで使用されるヘリウムガスですが、医療の現場でもいろいろなところで使用されています。そのひとつに人工換気を行うガス源として、ヘリウムと酸素を混合したガスを使用するケースがあります。
既にCOPDや喘息など、気道障害のある症例でヘリウムと酸素の混合ガスを使用した報告がされており、ヘリウムが酸素や窒素に比べ細いところを通過しやすい特性があるとことがわかっています。

 

ではそもそも、成人に比べ解剖学的に細い気道を持ち、内径2.0mmからととても細い気管チューブを使用する新生児におけるヘリウムの効果はどのようなものか、そのような視点から、この度、動物実験によるアヴェアを使用したヘリウム・酸素混合ガスの効果を検証し、その結果を第14回新生児呼吸療法モニタリングフォーラムにて発表しましたのでその内容をご紹介いたします。

 

今回の検証/発表に際し、多大なるご支援とご協力をいただきました、信州大学医学部 小児科学講座 馬場淳先生、並びにエア・ウォーター株式会社 総合開発研究所医療研究室 相川徹也様に深く御礼申し上げます。

また以前、特別企画にてデューク大学ICUのRRT、John D. Davies氏にヘリウム・酸素混合ガス(Heliox)について語っていただきましたので、合わせてご覧ください。

(人工呼吸器部 宮内香織)

 

 

■背景
ヘリウム(He)は分子量が窒素の1/7であり、その小さな分子量であるため密度が小さく、細く抵抗が大きい流路でも通過しやすい特性を持っている。従ってヘリウム・酸素混合ガス(以下、He+O2)は気道抵抗の高い状態でも、低い気道内圧で換気がおこなえる。
今般、気管抵抗増加モデルの家兎をHe+O2で換気し、換気・酸素化で良好な結果が得られたので報告する。

■対象および方法

モデル 気管切開した家兎に4.0mmの気管チューブを挿管し、さらに内径2.0mmの気管チューブを直列につなぐことで気管抵抗を増加せたモデルを作成
気道抵抗

(ETT4 mm) 248.6cmH2O/l/sec/㎏

(ETT4 mm + 2 mm) 841.2cmH2O/l/sec/㎏

人工呼吸器 米CareFusion207製アヴェア新生児モード
換気様式 プレッシャーコントロールA/C

3つの視点から比較を行い、それぞれ動脈血ガスおよび1回換気量を評価した。

■結果
実験①
・He+O2(He: O2=70:30)とN2+O2(N2: O2=70:30)の比較
 – 換気条件:プレッシャーコントロールA/C、PIP=18 cmH2O、PEEP=7 cmH2O、RR=20、Ti=0.60 s

実験②

・ He+O2のHe濃度を変えPaCO2を比較

 – 人工呼吸器の換気条件は実験①同様。

 – PaCO2は44.7、43.9、40.1、38.5 mmHgと低下した。

実験③

・ He+O2のHe濃度を変えVt/kgを比較

  – 人工呼吸器の換気条件は実験①同様。

  –He濃度を0%, 20% 40%, 60%に上昇させたところ、Vt/kgは、11.0、11.1、11.7、12.8 ml/kgと増加した。

■考察
・Heの低密度という特性は乱流の層流化に寄与すると考えられるため、気道が細く抵抗が高くとも、ガスはよく通過する。
・気道抵抗の高い患者に対して、プレッシャーコントロールでHe+O2を使用すると、気道内圧を上げずに1回換気量を増やすことができるため、圧損傷を回避しながらCO2排出増加及び酸素化の改善が期待できる。

・高いFIO2が必要な症例では、Heによりガス交換が促進され、PaO2が上昇するとともに結果的にFIO2を下げられる。さらにその分Heの供給量を増加させ、効果を加速させていくことが期待できる。

 

■今後の展開
Heは解剖学的にも細い気管(支)を持ち、さらに細い気管チューブを使用する未熟児や新生児、小児の換気補助法の一つとして、選択することも可能であると考えられる。ただし、通常のガス用に設計された人工呼吸器にHe+O2が流れると、各種表示や換気量が不正確になるなど、正常に作動しなくなることから、He+O2用にキャリブレーションされた医療機器を使用することが大変重要である。

 

 

(2012年4月)

 

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