掲載:2018年7月 / 文責:レスピラトリ・ケア部 ベンチレータチーム
一般財団法人双仁会黒石厚生病院は、青森県黒石市を医療圏とする213床の地域に密着した医療機関です。
今回は、理事長・院長である石原弘規先生に、長期の人工呼吸を要する患者さんに使用するベンチレータの「安全性の確保と患者さんのQOL向上」ついてお話を伺いました。
一般財団法人双仁会黒石厚生病院 施設概要 |
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[ 所在地 ] 青森県黒石市大字黒石字建石9番1 |
[ 病床数 ] 213床 |
[ 診療科 ] 内科、外科、婦人科、麻酔科、血液透析センター、心臓血管外科 |
[ 職員数 ] 215名(2018年6月1日現在) |
[ 一般財団法人双仁会黒石厚生病院 webサイト ] http://soujinkai-kousei.jp/kuroishi |
理事長・院長 石原 弘規先生 ご略歴 |
[ 経歴 ] |
1973年: 弘前大学卒業、弘前大学医学部麻酔科学教室入局 |
2013年: 弘前大学定年退職 |
2013年: 黒石厚生病院 副院長・麻酔科部長 |
2014年: 黒石厚生病院 理事長・院長 |
[ 資格 ] 麻酔科専門医、臨床修練指導医認定、集中治療医学会専門医、医学博士 |
まずは一般財団法人双仁会 黒石厚生病院についてお教えください。
一般病棟が57床、療養病棟が2つで各57床、昨年から障害者病棟42床、全部で213床になります。2階が障害者病棟、3~4階が療養病棟、5階が一般病棟となっております。
病院の理念として「患者の皆様を中心に置くチーム医療を提供することをめざし、地域医療に貢献します」とありますが、黒石市(青森県)の「地域医療」についてお教えください。
なかなか黒石市単独というのは難しいのです。
黒石市の主たる病院は国民健康保険黒石病院で、急性期と地域包括ケアがあるのですが、腎不全や長期人工呼吸器患者さんなど、全ての患者さんに対応することが難しいため、弘前市の管轄として弘前市の中核病院が対応しています。
しかし、弘前市の中核病院でも黒石市を含めた全ての患者さんを受け入れることはできません。特に人工呼吸器を使用する慢性期患者さんや維持透析が必要な慢性期患者さんを受け入れる病院が少ないので、そこを当院が担うという所で地域医療に貢献しております。
また、「患者の皆様を中心に置くチーム医療」を提供するための取り組みをお教えください。
これは、従来は医師が中心で、その下にコメディカルがいて・・・という体制だったのですけど、そのような体制ではなく患者さんが中心でなくてはいけない、医師はあくまでもそのチームの一員である、ということです。なかなかそれを受け入れられない医師も居るのですが、これは私が当院に来た時から繰り返し言い続けています。
「患者の皆様を中心に置くチーム医療」を提供するためには、例えば長期人工呼吸器の患者さんに車椅子に移乗していただいてリハビリの部屋に行くとか、天気が良ければそのまま外にパンを買いに行くとか。当院の近くに大変美味しいパン屋さんが有るんですよ。
そういうところで、医師というよりは臨床工学技士さんや看護師さん、リハビリスタッフの方とかみんなで連携してやっています。
病院のホームページには「黒石厚生病院は長期人工呼吸管理中の患者様を積極的に受け入れております」とありますが、開院当初よりそのような体制だったのでしょうか。
いえ、私がこの病院に来た時は、サーボ900Cという往年の名器が3台とサーボSが2台で、人工呼吸器を使用する患者さんは多い時でも2~3名くらいでした。
私が大学病院にいた時は殆んどICUで40年間勤務していましたので、その経験から当院であれば人工呼吸器の患者さんをもっと受け入れ可能ではないかと考え、徐々に増やしているところです。
現在は何人の人工呼吸管理中の患者さんがいらっしゃるのでしょうか?
(2018年4月末時点の患者さんは)30人です。
人工呼吸管理中の患者さんはどのような呼吸不全の疾患なのでしょうか?
色々ありますが、頸椎損傷の方、脳卒中後の方、頭部外傷の方、あとは塵肺などの肺疾患の方ですね。様々です。神経疾患の方もいらっしゃいます。
今後は高齢の重症慢性疾患の患者さんも受け入れるとのことですが、そのためにどのような準備をされているのでしょうか?
看護師さんや、臨床工学技士さん、リハビリスタッフの方に呼吸療法認定士の資格取得を勧めており、援助もしています。それから、臨床工学技士さんの数も足りないので募集をかけています。この地域は弘前から離れていて田舎なのでなかなか応募がなく苦労しています。
また、人工呼吸器の取り扱いで最も大切なのは安全面だと考えています。一番危惧しているのは、スイッチの入れ忘れや回路外れなどで、定期的な安全講習会の開催と毎日朝夕のカンファレンスで繰り返し注意喚起をしています。
実は私が当院に勤務して3年目くらいの時に、回路外れのアラームが鳴っても直ぐにスタッフが病室に行かなかったという事がありまして、幸いその方は後遺症もありませんでしたが、それを契機にアラームは凄く大事だなという意識を改めて持ちました。
現在はディーラーさんの協力で全ての病室のベッド毎に人工呼吸器からのアラームを受信できる機器を取付け、アラームが鳴った際はナースコールと3台のPHSに通知され、直ぐに病室に向かう体勢を整えています。
将来的にはレスピラトリサポートチームとか、そこまでできるか解りませんが、そういったものが有っても良いのかなと思っております。
▲ ベッドサイドの受信機によりMONNAL T60のアラームがスタッフのPHSに転送される
ここで弊社の人工呼吸器「MONNAL T60」について質問させていただきます。先生がMONNAL T60をお知りになられた経緯をお教えください。
当院で使用していた人工呼吸器ではパワーが足りず、自発呼吸に対する追従性などが弱いかなと思い、新しい人工呼吸器を探している時にディーラーさんから紹介されました。
当院にはエア配管があったのですが、コンプレッサが故障してしまい交換費用として何百万円もかかるという状況でしたので、それならタービン内蔵タイプが良いという事になり、MONNALT60は打って付けでした。
最初にMONNAL T60を見られたときは、どのように感じられましたか?
とにかくコンパクトで軽いなと思いましたね。あと音がうるさくない。昔の人工呼吸器は、病棟で使用するにはかなり音が大きかったですから。
長期人工呼吸管理を要する患者さんのQOLを向上させるために取り組まれていることはありますか?
▲ 人工呼吸器対応のシャワー設備
当院では人工呼吸を要する患者さんを広く青森県内から受け入れていますので、障害者病棟に関しては人工呼吸器対応のシャワー浴ができる病棟に作り変えています。
また、先程チーム医療の一環の中でも触れましたが、人工呼吸器を装着したまま患者さんを移動することができる車椅子をオーダーメイドで作りました。
安全かつ容易にセッティングできるように、細かい部分は臨床工学技士さんが調整してくれました。
他には、当院には保健所で認められていた窓の無いICUが有ったのですが、窓を取り付ける改修は認可が下りないとの理由から、元々窓があった部屋にICUを移しました。元のICUはその分ナースステーションを広くして、長期人工呼吸器を使用している患者さんでも外が見える病棟に変更しました。
▲ オーダーメイドの車椅子は人工呼吸器が安全かつ容易にセッティングできるよう工夫されている
▲石原院長と弊社営業担当:原田
最後に、黒石厚生病院と同じような環境で地域医療に貢献されている医療関係者の方にメッセージをお願いします。
MONNAL T60は回路も汎用な物が使用でき、移動も内蔵バッテリ+補助バッテリで5時間使えるので、一時帰宅や外出を希望する患者さんには非常に良い人工呼吸器だと思います。
長期入院で意識のある患者さんは家に帰りたいという気持ちが有るので、チーム医療の一環として将来的には1時間でも2時間でもご家族やご本人が希望すれば応えたいと思います。
当院の取り組みが少しでも、同じような環境で地域医療に貢献されている医療施設の参考になれば幸いです。
本ユーザーインタビューを通じて、黒石厚生病院様の地域医療における真摯な姿勢と様々な取り組みを教えていただきました。
お忙しい中ご協力いただきました石原先生並びに関係者の皆様に深く感謝申し上げます。