赤外観察カメラシステム PDE vol.4 食道再建時胃管の血流評価
埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科 熊谷洋一先生
掲載:2015年5月 / 文責:クリティカル・ケア部
食道再建術は食道癌根治術の際、切除された食道のかわりに胃や腸などを用いて再建し食事をおこなえるようにする手術です。早期より食道再建術時にPDEを用いた研究に積極的に取り組まれ、消化器外科学会、日本外科学会等で多数ご発表を頂いております、埼玉医科大学 総合医療センター消化管・一般外科 熊谷先生にPDEを用いた食道再建時の血流評価についてお話を伺いました。
1.食道再建について
2.胃管の血流について
3.PDEとの出会いについて
胃管の作成方法に関しては様々な議論がなされています。昔の話ですが左胃大網動脈と右胃大網動脈に交通がない場合は左胃大網動脈を残すメリットがあまりないと考えられ、大弯を処理する際に左胃大網動脈を胃管につけずに胃壁に沿って処理されていました。
私はたとえ左右の胃大網動脈の交通がない場合も、左胃大網動脈内を血液が逆流するのではないかと考え、左胃大網動脈を根元で切って大弯のアーケードを温存して胃管を作成するようにしています。しかし、大網の血管内の血行動態がどのようになっているのか?術中に簡便にする確認する手段がありませんでした。ICG蛍光法は術中簡単に血管造影を行うことができるので、大網内の血流が簡便に把握できるのではないかと思いPDEの使用をはじめました。
2012年より現在まで約70例を検討しましたが、全例で左胃大網動脈を血流が逆流し、血管内の血流は胃壁内の血流に先行し流れていることが確認できました。このことはPDEを用いて初めて証明されたのです。
左右の胃大網動脈の交通がない症例。 |
左胃大網動脈を血流が逆流。 | 右胃大網動脈の根元が造影されてから30秒後胃管の先端まで造影が確認された。 |
また、大網の血管内血流の確認だけではなく、胃管の食道と吻合する場所に血流がちゃんと供給されているか確認する為にも使用をしています。胃管再建術では右胃大網動脈からもっとも離れている胃管先端と食道を吻合するわけですから、胃管の一番血流の悪いところと食道をつなぐのです。私たちは胃管血流の評価のパラメータとして10㏄で希釈したICGを1ml(2.5mg)静脈内投与し、PDEにて右大網動脈の根部から、胃管の先端が造影されるまでの時間に着目して観察を行っています。
4.今後のICG蛍光法について
この度はお忙しいところ、貴重なご意見を頂き、誠にありがとうございました。
熊谷洋一 先生 ご略歴
1992年3月 | 弘前大学医学部卒業 |
1992年6月 | 東京医科歯科大学医学部付属病院第一外科入局 |
2001年4月 | 都立駒込病院 |
2003年4月 | 太田西ノ内病院(2008年より部長) |
2011年10月 | 埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科 講師 |
2012年12月 | 東京医科歯科大学 食道・一般外科 准教授 |
2013年4月 | 埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科 准教授 |
免許・資格
日本外科学会 認定医、専門医、指導医 |
日本消化器外科学会 認定医、専門医、指導医 |
日本消化器内視鏡学会 専門医、指導医 |
日本食道学会 食道科認定医、食道外科専門医 |
消化器がん治療認定医(日本消化器外科学会) |
がん治療認定医(日本がん治療認定機構) |
文責 OR教育部
(2015年5月)