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PDEユーザーレポートVol.4

食道再建術は食道癌根治術の際、切除された食道のかわりに胃や腸などを用いて再建し食事をおこなえるようにする手術です。早期より食道再建術時にPDEを用いた研究に積極的に取り組まれ、消化器外科学会、日本外科学会等で多数ご発表を頂いております、埼玉医科大学 総合医療センター消化管・一般外科 熊谷先生にPDEを用いた食道再建時の血流評価についてお話を伺いました。

 

1.食道再建について

食道再建術について教えてください。

食道癌の手術では、食道を切除してしまうため、術後飲食を行うには胃や腸を用いて食道を再健しなければなりません。ほとんどのケースでは胃で作成した胃管を使用します。

腸管を使用するケースはどのような場合でしょうか?

腸管を使用するケースは稀ですが、胃切除等を行っている症例には結腸を使用して再建を行っています。

手術時に特に注意している事は何でしょうか。

食道の手術は頸、胸、腹と3カ所の手術を同時にするため様々な合併症が起こりえます。特に、様々論文を確認すると、食道再建術後の縫合不全の発生率は6.2%~27%と報告されています。術後の縫合不全を回避する最も重要な要素は血流のよい胃管をつくる事。これを特に意識しています。

縫合不全というと、縫い方が悪いと起こる印象がありますが?血流とどのような関係性があるのでしょうか?

縫合不全とは吻合部の一部が生着せず離開してしまうことで、飲食した食べ物がそこから出てしまいます。胃管再建時の縫合不全の原因として最も重要な要素が血流です。血流が良ければ創傷治癒力も高く、器械で吻合しても手で縫っても大きな差はないと考えています。しかし血流が悪い場合は、治癒力も低く、場合によっては壊死してしまうケースもあります。その場合は再手術が必要となってしまいます。

 

2.胃管の血流について  

胃管はどのように作成するのでしょうか?

血管や大網の処理の仕方は各施設で異なりますが、先述したように食道を再健する際にもっとも重要なことは、作成した胃管がきちんと血液で栄養されることが重要になります。
胃を栄養する血管は様々ありますが、その中で胃管を栄養する血管は主に右胃大網動脈です。他はほとんど切ってしまいます。ですから右胃大網動脈を丁寧に温存するのはもちろんですが、左胃大網動脈も根元まで追ってから切ることで胃管にすべてつけるようにしています。

 

 

3.PDEとの出会いについて

先生がPDEに興味をお持ちになったきっかけはどのような理由からでしょうか?

胃管の作成方法に関しては様々な議論がなされています。昔の話ですが左胃大網動脈と右胃大網動脈に交通がない場合は左胃大網動脈を残すメリットがあまりないと考えられ、大弯を処理する際に左胃大網動脈を胃管につけずに胃壁に沿って処理されていました。

 

私はたとえ左右の胃大網動脈の交通がない場合も、左胃大網動脈内を血液が逆流するのではないかと考え、左胃大網動脈を根元で切って大弯のアーケードを温存して胃管を作成するようにしています。しかし、大網の血管内の血行動態がどのようになっているのか?術中に簡便にする確認する手段がありませんでした。ICG蛍光法は術中簡単に血管造影を行うことができるので、大網内の血流が簡便に把握できるのではないかと思いPDEの使用をはじめました。

 

2012年より現在まで約70例を検討しましたが、全例で左胃大網動脈を血流が逆流し、血管内の血流は胃壁内の血流に先行し流れていることが確認できました。このことはPDEを用いて初めて証明されたのです。

 

左右の胃大網動脈の交通がない症例。

左胃大網動脈を血流が逆流。 右胃大網動脈の根元が造影されてから30秒後胃管の先端まで造影が確認された。

また、大網の血管内血流の確認だけではなく、胃管の食道と吻合する場所に血流がちゃんと供給されているか確認する為にも使用をしています。胃管再建術では右胃大網動脈からもっとも離れている胃管先端と食道を吻合するわけですから、胃管の一番血流の悪いところと食道をつなぐのです。私たちは胃管血流の評価のパラメータとして10㏄で希釈したICGを1ml(2.5mg)静脈内投与し、PDEにて右大網動脈の根部から、胃管の先端が造影されるまでの時間に着目して観察を行っています。

 

時間に着目している理由は何故でしょうか?

評価のパラメータもいろいろあると思いますが、手術中に簡単に評価する方法として時間に注目しました。静脈内にICGを投与すると右胃大網動脈を経由して胃管の十二指腸側から胃管先端に向かって造影されていきます。胃管先端は時間経過に伴い除如に造影されることが確認できます。これまでの経験から右胃大網動脈の根部が造影されてから、90秒以内に造影されないと壊死を起こす可能性があることがわかりました。現在では60秒以内に造影されるエリアであれば血流はまったく問題ないと考えており、できるだけそこに食道を吻合してそれより先端は切除するようにしています。

胃管再建術にPDEは必要でしょうか?

従来の肉眼所見のみの胃管血流の判断にPDEはより客観的な情報を加えることができます。前述の方法を使って吻合位置を決定していますが、直近50例で縫合不全は起こっていません。PDEが施設にあるなら是非やってみた方がよい検査だと思います。
熊谷先生が考えるPDEの利点
・今まで確認が出来なかった血管内を血液が流れる様子を術中簡便に確認することができる。
・胃管先端に血液が供給されているかどうか、術中簡便に確認することができる。

 

4.今後のICG蛍光法について  

今後のICG蛍光法ついてどのようにお考えでしょうか?

まだまだ器械の改良の余地はあるかと思います。食道領域での観察は広いエリアを観察します。撮影範囲が狭いこと、画面の四隅の蛍光が弱くなってしまうなど、撮影のコツみたいなものもあります。また、定量化に向けても課題があります。蛍光の強度を測るなどの取り組みも行われていますが、まだまだ簡便に解析することができません。術中簡便に定量化ができるようになることを期待しています。

 

この度はお忙しいところ、貴重なご意見を頂き、誠にありがとうございました。

 

熊谷洋一 先生 ご略歴

1992(平成4)年3月 弘前大学医学部卒業
1992(平成4)年6月 東京医科歯科大学医学部付属病院第一外科入局
2001(平成13)年4月   都立駒込病院
2003(平成15)年4月   太田西ノ内病院(2008年より部長)
2011(平成23)年10月 埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科 講師
2012(平成24)年12月 東京医科歯科大学 食道・一般外科 准教授
2013(平成25)年4月 埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科 准教授

 免許・資格

日本外科学会 認定医、専門医、指導医
日本消化器外科学会 認定医、専門医、指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医、指導医
日本食道学会 食道科認定医、食道外科専門医
消化器がん治療認定医(日本消化器外科学会)
がん治療認定医(日本がん治療認定機構)

 

 

文責 OR教育部 三根

(2015年5月)

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