掲載:2018年12月 / 文責:レスピラトリ・ケア部
日時 : | 2018年10月20日(土)11:45~12:45 |
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会場 : | 埼玉県立小児医療センター6F講堂 |
演者 : |
閑野 将行先生 埼玉県立小児医療センター総合周産期母子医療センター新生児科医長 |
座長 : |
長 和俊先生 北海道大学病院周産母子センター准教授(診療教授) |
研究会URL : | https://gakujutsushukai.jp/jcld2018 |
2018年10月20日に開催されました第31回日本新生児慢性肺疾患研究会(会長 埼玉県立小児医療センター 総合周産期母子医療センター長 新生児科部長 清水正樹先生)において、共催セミナーを開催させていただきましたのでご報告致します。
今回、演者として埼玉県立小児医療センターより閑野将行先生、座長として北海道大学より長和俊先生をお迎えし、「新生児の呼吸管理における吸入酸素濃度自動調整」についてご講演いただきました。
▲ セミナー風景
今回のご講演では、先ず、閑野先生が勤務されておられます埼玉県立小児医療センターの施設紹介に始まり、低酸素や過剰な酸素暴露による新生児に対する慢性肺疾患や未熟児網膜症といった合併症との関連、合併症を防ぐ為にSpO2を一定の範囲内に維持するための、吸入酸素濃度を頻繁に手動調整することの難しさを解説されました。
次に、AVEAベンチレーターによるCLiO2(吸入酸素濃度自動調整)機能の仕組み、実際に臨床使用された結果について、手動調整と自動調整による1時間当たりのFiO2の変更回数とSpO2を目標範囲内に維持できた割合を比較されました。
ある症例における実施結果を以下に示しますが、検討を行った5例で同様の結果が得られ、自動調整は、手動調整よりもSpO2がより多く目標範囲内となり、SpO2が目標値から大きく低下した割合が少なくなったことから、低酸素が防止できる可能性があり、また、手動調整より多くFiO2が変更され、酸素化指標が改善したことから、過剰な酸素曝露を回避できる可能性もあると解説されました。
FiO2 | SpO2目標値 | |||
変更回数 | 範囲内 | 目標値-5%以下に低下 | 目標値+5%以上上昇 | |
手動調整 | 11回 | 25% | 15% | 22% |
自動調整 | 320回 | 31% | 3% | 6% |
AVEAでは主にCPAPモードが使用されましたが、CPAPモードでの吸入気酸素濃度自動調整の有効性について、聴講者に大変興味を持たれていました。
予後については、現時点では短期予後についての検討がなされ、呼吸器関連の短期予後を改善したという結果は確認できなかったものの、未熟児網膜症のstage2以降の発症率が自動調整の方が低かったことから、未熟児網膜症の重症化を予防できる可能性はあるかもしれないと纏められました。
▲ 演者の閑野先生(左)と座長の長先生
今後の課題として、SpO2目標値設定の幅、組織への酸素供給との関連(NIRSなど)、肺疾患や未熟児網膜症に対する短期予後、生命・中枢神経系(視覚を含む)・肺疾患に対する長期予後、自動化による医療者の業務負担軽減効果の検討などを挙げられ、今後も本研究に対する閑野先生の強い意気込みを感じました。
なお、本講演のDVDを現在作成中です。
配布が可能となりましたら、改めてご案内させていただきます。
最後に、今回の共催セミナーにおいてご講演いただいた閑野将行先生、座長をお務めいただいた長和俊先生に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。